HAIKU日本2019夏の句大賞発表

HAIKU日本2019夏の句大賞 金賞

夏の海撃たれたように手を広げ

[ 熊本県熊本市 山上賢四郎 ]

(評)夏と言えばもちろん海。ワクワク感を誘います。眩しい夏の海に合わせてきたのは、「撃たれた」というダイナミックな言葉。飛沫を大きく跳ね上げ海面に身を投げ出す。アメリカの西部劇のワンシーンを夏の海に重ねた一句。ガンマンに撃たれ「手を広げ」倒れ込んでいくかのよう。夏の海の眩しく開放感溢れる豪快さを作者なりの表現で生き生きと伝えています。

銀賞

勤務医のアロハシャツ着て帰りけり

[ 大阪府大阪市 清島久門 ]

(評)ハードな一日を過ごしたのだろう勤務医が、先程までの真剣な表情とは打って変わって見間違えるような姿で作者の前を通り過ぎます。颯爽と歩く勤務医を驚きと微笑みを持って眺める作者。鮮やかなアロハシャツが印象的です。「けり」の切れが何とも心地よく、読者をもホッとさせてくれます。アロハシャツ特有の解放感が一句に漂います。

銅賞

掃くほどに紅こぼす百日紅

[ 東京都目黒区 佐々木弓子 ]

(評)初夏から秋にかけて長く咲く「百日紅」。百日も花が咲くことから“百日紅(ひゃくじつこう)”、猿が滑ってしまうほど樹皮がすべすべしていることから“さるすべり”と呼ばれます。華やかですが小花が集まって咲いており、一つ一つの花の命は短くてこぼれやすい。こぼれた花は紅の絨毯のようで「掃くほどに紅こぼす」の措辞が優しく響きます。華やぎと淋しさを併せ持った「百日紅」を情趣豊かに詠んだ一句。

風死して供花の声なき声を聴く

[ 群馬県伊勢崎市 白石大介 ]

(評)放火で多くの犠牲者を出してしまった京都の無慈悲な事件を連想してしまいます。「風死して」は、風がそよとも動かず夏の耐え難い暑苦しさを言います。「声なき声」に作者の思いが詰まっています。故人との別れのシーン。飾られた花から「声なき声を聴く」。悲しみは深い。感情を押し殺したかのような作者の痛みが読者の胸を刺す一句。

その理由白南風に聞けあはははは

[ 兵庫県西宮市 幸野蒲公英 ]

(評)作者によりますとこの句は、LINEで来た親友からの悩みを読んだ時にふっと湧き出た一句だそうです。鉛色の空から吹く湿度の高い憂鬱な南風「黒南風」に対し、「白南風」は梅雨が明け雲を吹き飛ばすかのように吹く眩しい南風のことです。「白南風」は、悩みの「その理由」を一掃してしまったことでしょう。親友に対する愛情が詰まっており、「あはははは」が圧巻の一句。

宣誓の直線の影原爆忌

[ 兵庫県尼崎市 大沼遊山 ]

(評)夏の甲子園。真っ白な宣誓台に立ち、直立不動のまま力強い宣誓をする選手。八月六日の朝、人類は74年目の「原爆忌」を迎えました。多くの犠牲者の霊を慰める日に、宣誓の手の影が真っ直ぐに伸びます。新しい時代を創り上げていく平和への「直線の影」であることを願います。私たちは平和への道を真っ直ぐに進まなければなりません。敗戦、戦後という苦難の道を歩みながら、この日を迎えた日本人の忘れてはならない深い想いが十七音に静かに刻まれた一句です。

外出はデイサービスや茄子の花

[ 神奈川県藤沢市 本郷智女 ]

(評)慎ましやかに咲く淡い紫色の「茄子の花」。この下五によって一句に余韻が広がります。“千に一つも仇はない”と諺にもなっている「茄子の花」。咲けば必ず実を付けるという花のしおらしさがあります。どこか悲しげでもある句は、父や母の姿であったり自分の姿であったりとそれぞれの立場で心に響く作品です。

伊奈の夜たちまち明けて薔薇の風

[ 熊本県八代市 三上俊一 ]

(評)埼玉県伊奈町は薔薇の街。広さ1ヘクタールを越える5,000株のバラ園が有名です。旅吟の句として「伊奈の夜」が効果的に上五に置かれ美しい一句に仕上がっています。夏の夜は短く夜明けは早い。白み始めた初夏の空。目を覚まして窓を開ければうっとりするような甘い香りを風が運んでくれています。伊奈の夜明けが「薔薇の風」と共に印象的に詠まれた一句です。

<秀逸句>

パナマ帽飛ばされ風とひとり旅

[ 岩手県盛岡市 蘭延 ]

(評)「パナマ帽」はその昔、紳士用の正装として愛用されていたもので夏の季語です。今では、女性がおしゃれなアイテムとして被ることもありこの句の作者も女性です。「風とひとり旅」によって作者の旅に哀愁が漂います。「パナマ帽」によっておしゃれ感が漂い旅の途中のひとコマが詩的に表現されました。

青林檎気づかぬふりの気持ちあり

[ 埼玉県所沢市 内野義悠 ]

(評)まさに万葉集で分類された「寄物陳思」に属します。物に寄せて心情を詠んだ一句。「青林檎」で思い出させてくれるのが島崎藤村の詩集「初恋」に収められた「林檎をわれに与えしは人恋初めしはじめなり」。掲句には読者を共感させる美しいポエムのような世界観があります。「青林檎」のあの甘酸っぱさは、若者の恋愛の新鮮な味に似ています。

虚子の碑に影をかさねる大暑かな

[ 東京都練馬区 符金成峰 ]

(評)客観写生を貫き、花鳥諷詠を提唱した高浜虚子。代表作の一つ「流れ行く大根の葉の早さかな」は、まさにそのままを詠んだ一句。何でもない事の写生は虚子の目によって永遠にそこに存在します。「影をかさねる大暑かな」は季語の斡旋も見事です。明治、大正、昭和と生涯を通じ虚子の句は20万句を超えると言われます。刻まれている句は読者の想像に委ねられており、虚子へのオマージュとも取れる一句。

分蘗の無言の叫び青田波

[ 神奈川県相模原市 あづま一郎 ]

(評)分蘗(ぶんげつ)とは、根元や切株から稲の茎が枝分かれして株がどんどん増えていくこと。自然のおおらかな活力に触れると逆に、人間の矮小さに気付かされます。「無言の叫び」とは、田に生きる人でなければ感じ取ることのできない自分との対話です。作者の感性が鋭く詠んだ一句。吹き渡る風に波打つ「青田波」が印象深く鮮やかに目に映ります。

この先は青空ばかり夏の山

[ 神奈川県横浜市 山田知明 ]

(評)強く言い切った一句は、夏の山の清々しさを伝える晴朗な俳句となっています。一部分を書くだけで全体像が見えるのです。この句は、高い山なのか里山なのかを言っていませんが「この先」がポイントですね。「この先」が想像させるのは、やっと辿りついた名峰の雲の上でしょうか。青葉の山と青空が爽やかに広がって美しい眺望が開けます。

蛍ひとり我行く道の先におり

[ 山梨県南アルプス市 小林克夫 ]

(評)「蛍ひとり」と擬人化が成功した巧みな一句。昆虫でありながら何故か人の魂を宿しているかの如く表現される蛍。この句の「蛍ひとり」は誰を想っての蛍なのか・・・。作者は「我行く道の先」の一匹の蛍にどんな想いを寄せているのでしょうか。女性の面影でしょうか。詩情の織りこまれた一句となっています。

ひとゆすりして風鈴を吊るしけり

[ 大阪府和泉市 清岡千恵子 ]

(評)昨夏にはずしたままずっと箱の中に眠っていた「風鈴」。好きな音色のものはこうして何年も使い続けます。風鈴と一緒に厳しい夏を乗り越えていきます。蓋を開け手に取って「ひとゆすりして」音を確かめます。風鈴を目覚めさせるかのような「ひとゆすり」が句の情趣を深めています。涼しさを感じる一句。

引き算で味のととのふ夏料理

[ 大阪府大阪市 雛 ]

(評)素直な叙述が魅力の一句。“足し算のフレンチ”、“引き算の日本料理”と言われます。湯引きや灰汁引きは素材の旨さを引き出すための「引き算」の美学です。その技をふんだんに使った「夏料理」は涼しげで上品な様が目に浮かびます。

黙祷のあとにも無言原爆忌

[ 兵庫県尼崎市 尼島里志 ]

(評)広島と長崎に原子爆弾が投下されてから74年目の朝。全国の至る所で静かな平和への祈りが捧げられました。平和の大切さが胸に響かない世の中に決してしてはなりません。「黙祷のあとにも無言」の言葉にそんな誓いの込められた一句。

針箱の蓋の緩みや梅雨籠

[ 徳島県阿南市 白井百合子 ]

(評)「梅雨籠」は梅雨の時期に家に籠って外に出なくなること。外へ外へと目が向いてしまう晴天では決して目に入らない諸々を一気に片付けてくれるのも「梅雨籠」です。この季語と「針箱の蓋の緩み」との絶妙の取り合わせが慎ましやかな女性の横顔を見せてくれています。

でで虫の葷酒許さぬ門を這ふ

[ 愛媛県西条市 渡辺国夫 ]

(評)葷酒(くんしゅ)とはネギ、ニラなどの臭い野菜と酒のこと。「葷酒山門に入るを許さず」とは、清浄な禅寺の門の中へ不浄な物を持ち込むことを禁じるの意。掲句はでで虫にも山門を入ることは許されないの意味で、仏教の戒律と「でで虫」の取り合わせが俳味のある一句へと仕上げています。「門を這うでで虫」と意外性のある着想が面白い。

海開きトップニュースの平和かな

[ 熊本県八代市 柳武久 ]

(評)「海開き」は、ひと夏の無事を祈願して子ども達らが海へ泳ぎだす行事で、毎年目にする光景です。海岸がいっぺんに賑やかになります。この「海開き」がこの日のトップニュースになったという。この日が大事件や大事故がなく平穏な一日だったことを表しています。日常が平和である幸せ、平和の大切さを改めて知らされます。

臥す祖母に絵本を読む子梅雨の蝶

[ 沖縄県那覇市 成瀬敦 ]

(評)「蝶」は春の季語ですが、その他の季節に見られる蝶を「秋の蝶」、「冬の蝶」とそれぞれに哀感を込めて詠みます。「梅雨の蝶」は梅雨の晴れ間に見る蝶で懸命に生きるイメージです。孫がおばあちゃんに絵本を読む。病気の祖母を励ましている情景が、何とも微笑ましく感じられる一句です。

<佳作賞>

洋芝の瑞瑞しきや夏競馬

北海道札幌市 飛梅

母を恋ふ少年になる蛍狩り

岩手県北上市 川村庸子

今日はパパ金銀の斧読む夏夜

岩手県遠野市 hoso

石佛の石を出られぬ暑さかな

宮城県仙台市 鹿目勘六

テーブルはまるく響いてレモン水

宮城県仙台市 繁泉祐幸

走り梅雨古文書開き別の顔

山形県山形市 一日一笑

夏館琴の音流れ風流れ

山形県米沢市 山口雀昭

早苗田の真赤な夕日や深き天

茨城県つくばみらい市 池端絹子

おなじ具をカレーに分けて子供の日

茨城県土浦市 株木謙一

滴りのひとつひとつは孤独かな

茨城県常陸太田市 舘健一郎

影遊び夕焼け空にわらべ歌

茨城県水戸市 一本槍満滋

筑波嶺に雲遊ばせて田植かな

栃木県宇都宮市 久我恒子

雷鳴や歯を磨いたか忘れたり

群馬県安中市 坂本睡

サンダルや西日編み目に刺さり込み

埼玉県上尾市 アヴィス

大海の入日の見ゆる避暑の宿

埼玉県さいたま市 加藤啓子

夏霧や昭和から来たと云ふ男

埼玉県さいたま市 坂西涼太

クーラーに母の見守り任せをり

埼玉県さいたま市 本橋葉月

独り笑む証明写真梅雨寒し

埼玉県所沢市 内野義悠

俳諧の道なき道や夏の草

千葉県市川市 田村さよみ

宇宙にも心臓ありて大夕焼

千葉県市川市 藤田真純

還暦をふうつと吹いては走馬燈

千葉県浦安市 三島閑

夏燃ゆる恋の旋律ハイテンション

千葉県山武市 天乃貴月

みどりごのやうに木苺透きとほり

千葉県千葉市 千葉信子

橋うらに水のゆらぎや半夏生

千葉県船橋市 川崎登美子

裏路地の打ち水避けて花避けて

千葉県松戸市 星野真紀子

気怠げな猫よ見つめるかき氷

東京都足立区 田中武啓

蟻塚やドヴォルザークのごとき雨

東京都江戸川区 丸山恵美

夏蛙啼けば天地の星瞬く

東京都品川区 藍太

夏至夜風一駅歩くか酔いざまし

東京都豊島区 潮丸

太宰忌の雨後の芥の生臭き

東京都青梅市 渡部洋一

蛍狩り吾子のまなこなお耿耿

東京都小平市 佐藤そうえき

激カレー友は大げさに汗拭けり

東京都清瀬市 林優

しぶき上げ水の流れに負けぬ夏

東京都八王子市 絹の道

幼稚園バスはももいろ田水沸く

東京都八王子市 村上ヤチ代

満天の星を受け止め登山宿

東京都東村山市 稜風

ビル間より眩しき空へ糸とんぼ

東京都武蔵野市 伊藤由美

トタン屋根昭和に還る夕立かな

神奈川県海老名市 一徹

体温と気温が同じ夏の果て

神奈川県川崎市 もろみ五郎

いつからか通り過ぎるだけの夏

神奈川県相模原市 中村成吾

サバンナへ象の鼻向く夏の果

神奈川県相模原市 藤田ミチ子

開聞岳本土の果ての夏の空

神奈川県相模原市 JUNN

熟れトマト太古の海の塩をふる

神奈川県相模原市 渡辺一充

風薫る題名のなき印象画

神奈川県座間市 石垣葉星

夏の川繰り出す友に竿の列

神奈川県茅ケ崎市 つぼ瓦

草取りやウフフと笑うイヤホーン

神奈川県茅ケ崎市 廣瀬順子

次々と窓を埋めたる夏の雲

神奈川県三浦郡 葉山さくら

廃線の後を辿りて晩夏光

神奈川県横浜市 大舘圭子

萱葺きの破風に涼しや青田風

神奈川県横浜市 要へい吉

蚊遣り火や燃えて豚の目光りけり

神奈川県横浜市 鈴村あや乃

風死すや静かに動くホームレス

神奈川県横浜市 竹澤聡

黒々と日焼の交通整理員

神奈川県横浜市 とりこ

竹戦ぎ蝉も鳴き止む40℃

新潟県新潟市 川崎郁夫

沢風や蕎麦屋の門の鯉のぼり

新潟県南魚沼郡 高橋凡夫

ようよう白む窓短夜つれなし

石川県金沢市 玲

揚羽蝶豪奢な羽の踏まれたり

福井県小浜市 神田雅之

花氷誰にも言はぬ恋がある

山梨県韮崎市 三八五

喝采を浴びるごと湖せみしぐれ

長野県安曇野市 小川都

甥っ子の坊主頭や水遊び

長野県南佐久郡 高見沢弘美

割箸を敢えて選びし冷奴

岐阜県多治見市 樋口緑

夫呼べば振られ応へる麦藁帽

静岡県湖西市 市川早美

山頂は直と雷鳥迎えけり

静岡県三島市 森島酔月

読みかけの本投げ出してソーダ水

愛知県一宮市 胡遊

かき氷スプーン鏡に舌チェック

愛知県岩倉市 日置理沙

河馬の口ぐわりと風を呑む晩夏

愛知県春日井市 ぐれ

眼無きマネキンに着す藍浴衣

愛知県高浜市 篠田篤

夏野菜水にさらしてついガブリ

愛知県丹羽郡 琉康

夜濯ぎや今日の疲れを搾り切る

愛知県名古屋市 久喜聖子

駆けて行け君だけの夏抱きしめて

愛知県名古屋市 白沢修

人の世や忙しき限り蝉時雨

愛知県名古屋市 松橋完明

父の日やいつも通りの日曜日

三重県松阪市 谷口雅春

棟梁の肚の座りし日焼かな

滋賀県彦根市 馬場雄一郎

もう父は母に逢えない百日紅

京都府京都市 田久保ゆかり

雲の峰大仕事無事終へし日の

大阪府池田市 木りん

ここも空地峰雲たかくたかくあり

大阪府和泉市 小野田裕

蛾の翅の砕けてしづかなる夜空

大阪府和泉市 小野田裕

麦秋の揺れぬ瞳を抱きにゆく

大阪府茨木市 元晶

引き剥がすビニルの匂ひ海開

大阪府大阪市 浅山幹也

網繕ふ老の背にある西日かな

大阪府大阪市 清島久門

礼服やスペイン坂の片かげり

大阪府大阪市 清島久門

足水に涼しさ感じよくねむる

大阪府大阪狭山市 ひでみ

空蝉のかたちくしきや考古学

大阪府堺市 椋本望生

薫る風令和の季節通りゆく

大阪府吹田市 橋口雅生

自惚れか濃い紫に燕子花

大阪府泉南郡 藏野芳男

ベランダに蝉死して在り雨あがる

大阪府高石市 岡野美雪

夏草はさしも伸びけり雨あがる

大阪府寝屋川市 伊庭直子

川のせせらぎ筒鳥のコンチェルト

大阪府寝屋川市 みやもち

水欲すタイマーの如き熱帯夜

大阪府枚方市 妃斗翠

あの橋もこの橋もまだ蛍川

大阪府枚方市 藤田康子

万感の花火師に来る朝静か

兵庫県明石市 田淵克洋

新緑や復活したるギャル雑誌

兵庫県尼崎市 大沼遊山

ほうたるの眼は闇にありにけり

兵庫県尼崎市 けーい〇

遠花火近ごろ欲しいものの無く

兵庫県加古川市 山分野鶴

陽は昇りタクト振られし蝉時雨

兵庫県神戸市 鞍馬睦子

サロマ湖とともに眠らん夏の星

兵庫県神戸市 藤井夢粒

峠越えいよよ故郷夏の雲

兵庫県神戸市 平尾美智男

炎昼の白く四角く止まれの字

兵庫県西宮市 渡部小凛

送り梅雨四万十川の沈下橋

兵庫県西脇市 齋藤真弓

海の家フェリーの向かふ桜島

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

蝸牛下り坂をも登るごと

岡山県岡山市 森哲州

惜別の蝉の大鳴き墓じまい

広島県安芸郡 ゆうでん

片陰のインバウンドや道狭し

広島県尾道市 広尾健伸

一人称僕から俺に変わる夏

広島県尾道市 帆足あさ

日焼顔校長室に優勝旗

広島県東広島市 葵そら

金魚掬ひ吾子のうなじに母の影

広島県広島市 黒うさ狐

夏神楽清めの酒の快し

広島県福山市 霧雨拓真

紫を噴き零してや花菖蒲

島根県松江市 寺津豪佐

ブランドの夏服軽しふふふふふ

島根県安来市 永谷明美

田廻りの出来る幸せ青葉風

山口県萩市 白馬岳人

ベーグルに日傘の並ぶ小路かな

山口県山口市 鳥野あさぎ

身の締まる朝の勤行沙羅の花

徳島県阿南市 東條明宏

今生の君に添い寝の半夏生

徳島県阿南市 土肥つや子

語り部の皺の幾重や沖縄忌

徳島県阿南市 深山紫

暑すぎて暑中見舞いも来やしない

徳島県阿南市 柚木亜弓

プラタナス影を作りて夏は来ぬ

徳島県徳島市 京

大夕立洛中洛外切り分けて

徳島県徳島市 山之口卜一

寝ころべがイスカンダルへ行く露台

徳島県徳島市 渡哲也

蚊遣火の薄煙に消ゆ独り時

香川県丸亀市 ROAD88

求愛のアポロンのごと青山河

愛媛県伊予郡 松田夜市

シャーペンの芯折れやすし五月晴

愛媛県新居浜市 翔龍

青梅雨やあの蝙蝠傘のあの黒さ

福岡県大野城市 梅路みね

念願の男日傘を手に入れる

福岡県北九州市 赤松桔梗

吾子の指す瞑き葉叢や蛍の火

福岡県北九州市 永鯰

老いゆけど夢は青々風薫る

佐賀県唐津市 浦田穂積

川べりを満面照らす蛍群れ

鹿児島県鹿児島市 有村孝人

単色の青春時代万緑よ

鹿児島県鹿屋市 鮫島啓子

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。

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