HAIKU日本春の句大賞 金賞
日帰りの山はなだらかつくしんぼ
[ 熊本県熊本市 横山誠 ]
(評)春の彼岸にふるさとを日帰りで訪ねたのでしょうか。「山はなだらか」で親しみのこもる山であることが窺えます。そこで見つけた「つくしんぼ」。よくある光景の中に、作者の想いと読み手の気持ちが重なります。この句の良さは上五の「日帰りの」に尽きます。気を張らずに力みがありません。作者は鳥の囀り、川のせせらぎとふるさとの春を満喫したことでしょう。この句からは、イメージが豊かに湧いてきて読後にあたたかみが残ります。
銀賞
肉叢の捌かれてゐる春一番
[ 大阪府大阪市 清島久門 ]
(評)肉叢(ししむら)は、肉のかたまりのことです。この句が詠まれたのは猪か鹿の解体現場。狩猟家にとれば普段のことですが、一般的にはなかなかお目にかかれません。春を呼ぶ強風「春一番」の季語によって臨場感を増しました。作者の目の前にある様子が伝わってきて思わずドキリとさせられます。近年“怖い句”が見直されていて、そのジャンルに入ります。類想の及ばないナマの感覚と表現力があります。
銅賞
春愁の今朝は水紋めきにける
[ 大阪府和泉市 小野田裕 ]
(評)「春愁」は、はっきりとした理由がないのにふっと心を覆う影のこと。その影が静かに心の中に広がっていくのを水紋の広がりに例える作者。水紋は、いつか消えてなくなります。決して同じ朝はありません。同じ朝がないからこそ「今朝は」、この「春愁」を優しく見つめています。「ける」と連体形で終わらせ、繊細な心の動きを詠み切っています。
北斎の波押し上ぐる春一番
[ 神奈川県藤沢市 佐野恋蔵 ]
(評)「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」は北斎の代表作で、世界中の人を魅了する“グレートウェーブ”。春一番吹き荒れる中、作者が佇むのはもちろん神奈川沖の海。あのダイナミックな波をさらに押し上げる程の「春一番」だという。下五へ畳み掛けていく強さが一気にその情景へと引き込みます。迫力満点の一句。
ピザパイをつまんで食べて昭和の日
[ 京都府京都市 河太郎 ]
(評)天皇誕生日、みどりの日、そして昭和の日と名を変えていった4月29日。昭和の日は、激動と復興の時代を顧み国の将来を考える日とされています。とは言え、ゴールデンウィークの真っ只中。日本中が大移動です。「ピザパイ」と「昭和」の取り合わせに妙味があります。日常の景にふと面白さを感じて表現した一句。
ホスピスを訪ねる朝の斑雪
[ 京都府京都市 未知香 ]
(評)斑雪(はだらゆき)は、薄く降り積もった雪が残っていて地表が現れている情景です。そして、ホスピスは緩和治療をしながら精神的な手助けをして生を全うできるようケアを行う施設です。心情を削ぎ落とした一句だからこそ読み手に響くものがあります。この簡潔性が良いですね。ホスピスと斑雪の取り合わせで生み出される感覚が印象的な作品。
手を止めて春満月の小半刻
[ 徳島県徳島市 山本明美 ]
(評)「春満月」は低い位置にあり、夕方に気付くともう出ていることがあります。春と冠するだけで月は明るく優しい響きです。「小半刻」は、三十分程の時間。何の最中だったのでしょう。月を眺める時間のみが詠まれ、後は読み手に任されています。忙しい中にも手を止めて眺めた時間は、作者にとって満ち足りたものだったに違いありません。長閑な暮らしを垣間見るようです。
<秀逸句>
靄に消えゆく君送りし春暁
[ 石川県金沢市 Rey ]
(評)破調ゆえに名残惜しさ、もどかしさなど作者の心情が強く伝わってきます。「君」とは恋人か、夫か、わが子か・・・。人それぞれの抱える背景により様々な別れのシーンがあるでしょう。読み手は自分自身の姿をこの句の中に思い入れます。女心を滲ませた女性ならではの一句です。平安朝の和歌を想起させる美しい俳句となっています。
益荒男は絶滅危惧種小町の忌
[ 群馬県伊勢崎市 白石大介 ]
(評)平安の歌人で絶世の美女と謳われた小野小町。季語「小町忌」は陰暦3月18日とされていますが、その生涯は定かではありません。「益荒男」は雄々しく強い男のこと。そうした男性が今、絶滅危惧種になっていると嘆く作者。我が身の儚さを歌に残した「小町」と「益荒男」の意表を突いた取り合わせに、何故か読み手は納得せざるを得ません。
春愁のひとつは阿修羅像の眉
[ 埼玉県さいたま市 加藤啓子 ]
(評)阿修羅像でまず思い浮かべるのが奈良・興福寺の「三面六臂」。右、左、正面とそれぞれ表情は違いますが、眉根を寄せた正面の顔は特に印象深いものがあります。作者はその眉に春愁を感じ取りました。阿修羅像には有名な句がいくつかありますが、そのどれとも重ならない独立した美しさと余情がこの句にはあります。
セイリング春の波間を縫いつける
[ 埼玉県所沢市 内野義悠 ]
(評)春の波には華やぎと長閑な感じがあります。この句は下五の措辞の上手さで「春の波」の穏やかさを的確に表現しています。また、風を受け波を縫合するかのように疾走するスピード感も伝えることに成功しました。
子らの声時に沸き立つ遅日かな
[ 千葉県市川市 田村さよみ ]
(評)作者はひとり春の夕暮の中。子供たちは賑やかに何かに興じています。風が運んでくるのは歓声。中七の「沸き立つ」がいかにも楽しげです。何をしているのかを言わず、読み手の体験から共感を呼びます。季語「遅日」がこの情景に深みを与え句の世界が広がりました。
過去へ引き未来へ踏めり半仙戯
[ 神奈川県相模原市 あずま一郎 ]
(評)鞦韆の傍題「半仙戯」。古代中国の王侯貴族の遊具として定着し“半ば仙人になった気分にさせられる”ことからこう呼ばれたとの伝えがあります。日本でも平安時代に宮中で流行ったそうです。ぶらんこに過去と未来を投影しました。上五と中七の対句的表現が新鮮です。三橋鷹女は、「鞦韆は漕ぐべし愛は奪うべし」と詠んで艶なる雰囲気を出しています。
つばくろを一番客に店開く
[ 滋賀県彦根市 馬場雄一郎 ]
(評)句切れを入れず上五から下五まで一気に詠み下すことで、俳句の大事な要素であるリズムが生まれました。燕の爽快な姿が浮かび上がります。平明で素直な作風に共感します。古くから人に大切にされてきた燕。繁栄の印という縁起の良さから店舗開業にはこの上もない客人なのです。
鷹鳩と化してパスタはジェノベーゼ
[ 京都府京都市 田久保ゆかり ]
(評)季語とジェノベーゼの大胆な取り合わせが目を引きます。「鷹鳩と化す」は獰猛な鷹が鳩となるような穏やかな気配を言う春の季語です。一方、ジェノベーゼはイタリアのジェノバ発祥のバジルペーストで作る香り豊かなパスタ。カフェのランチに頂くメニューにぴったり。仲春の候、充実したひとときが感じられます。
手枕や終はこぶしの下と決む
[ 大阪府大阪市 清島久門 ]
(評)「手枕」して作者は思案にふける。そして得た結論は「こぶしの下」。「こぶし」は田打桜とも呼ばれ、この花が咲くころ田打ちが始まります。気候変動を知らせる指標植物のひとつで、こぶしが咲けば“春”とされます。「終」の場所がこぶしの下であることに誰も異論はないでしょう。一句を締め括る「決む」が握り拳を連想させ、こぶしの形とも符合します。
借景は太閤の城花万朶
[ 大阪府富田林市 奥野とほる ]
(評)「花万朶」は枝が垂れ下がる程、桜がたわわに咲いていることを言います。「太閤の城」はもちろん大阪城。大阪の象徴として聳え立つ天守閣は街のどこからでも「借景」となり華やかさを添えます。日本が誇る景観美のひとつを詠み上げました。言うまでもない満開の桜の美しさを客観視した作品。
さえづりの校舎の窓を拭きにけり
[ 兵庫県尼崎市 大沼遊山 ]
(評)「さえづり」は同種の雄に対する縄張り宣言。雌に対しては恋の歌となります。授業の最中、作者はこの「さえづり」が気になって仕方がありません。声の主の所在を確かめたいのでしょう。下五の「拭きにけり」の動作が句を引き締めました。作者の思い出の一場面です。
自治会の役は輪番地虫出ず
[ 兵庫県神戸市 平尾美智男 ]
(評)大企業からPTA、自治会に至るまでおおむね春は役員改選の時期。自治会の役が輪番とすれば、作者も久しぶりのことなのでしょう。役目の感覚が戻ってきます。生活や人情まで想像されるこじんまりとした自治会のようです。季語「地虫出ず」が、この措辞だからこその俳諧味を出しています。
天近し三刀屋城址の桜かな
[ 島根県松江市 大倉正嗣 ]
(評)淡い緑色の桜・御衣黄(ぎょいこう)が咲くことで有名な島根県の三刀屋城址。花期はソメイヨシノより遅く、同じ時期に咲く八重桜との色のコラボレーションが楽しめます。戦国時代、出雲国尼子氏の居城の防衛拠点「尼子十旗」のひとつに数えられた名城でした。その風格を窺わせるような威風堂々たる一句。
イヤリングはづして桜まとひけり
[ 徳島県徳島市 石原緑子 ]
(評)折からの春風に咲き満ちた桜からの花びらを纏う。美しい桜を美しく詠むのは難しいものですが、作者は一句一章で見事に詠み上げました。自然の美と向き合った時、それに敵うものはありません。作者の繊細な心の動きと、女性としての奥ゆかしさが伝わってきます。桜吹雪の中へ読み手を誘うかのようです。
<佳作賞>
花筏儚き夢のレクイエム
北海道札幌市 夢老人
胸の中君たわむれる春恋し
北海道函館市 阿部佐和子
夕蛙聞くとも無しに通夜の席
北海道留萌市 三泊みなと
木の芽和昭和も母も遠くなり
青森県黒石市 福士謙二
春の風亡き祖父の志を思ひ出す
岩手県八幡平市 千のまさ
ああでもないこうでもないと春炬燵
岩手県盛岡市 桜月
旅人を待ちうけるのは春の宿
岩手県盛岡市 高橋青子
寝ころんでふっと目が合う土筆んぼ
岩手県盛岡市 蘭延
春風や角砂糖二個とっぽんと
宮城県仙台市 伊世貴志
魂をまっすぐ透かす八重桜
宮城県仙台市 繁泉祐幸
あんぱんは生涯の友啄木忌
宮城県遠田郡 武田悟
遠遠の今時にいたる春彼岸
山形県東置賜郡 高梨忠美
春風に乗って結婚招待状
福島県会津若松市 武藤主明
宇宙より花吹雪ありニュートリノ
福島県郡山市 小濃勉
囀や一人暮らしの部屋広し
茨城県桜川市 中原壱朋
タンポポや地蔵の陰にランドセル
茨城県土浦市 株木謙一
山桜奥へ奥へと誘い込む
茨城県常陸太田市 舘健一郎
ケアハウス入所祝いの燕来る
茨城県水戸市 栗原裕忠
瀬戸内を跨ぐ大橋風光る
栃木県宇都宮市 平野暢月
一抜けて二抜けて春の闇深む
埼玉県上尾市 くもがくれ
痴呆でもいいよ生きてや春なるぞ
埼玉県大里郡 梅澤邦夫
雲梯の一手一手や春の園
埼玉県春日部市 土屋栄
窓開けて畳喜ぶ春の陽
埼玉県川口市 くだり望
体内に音せぬ滝や朧月
千葉県柏市 東洋司
ぽかぽかと縁に並べてひな納め
千葉県柏市 小草
丹色の芽指して名を問ふ遅日かな
千葉県船橋市 川崎登美子
風いれし山の傾き竹の秋
千葉県南房総市 相海人
春昼や医師の机の聴診器
東京都大田区 素人
ポケットの落花を皿に浮かべけり
東京都足立区 木山宏美
車窓より目に焼き付けて春潮
東京都葛飾区 星野真紀子
朝ぼらけおもきまぶたにはなの影
東京都新宿区 黒川茂莉
大鯉の大欠伸して春吸へり
東京都新宿区 貞住昌彦
たぎり落つ枝垂桜の飛沫かな
東京都杉並区 中川ひろみ
見えずとも匂ふ丁字の大きさよ
東京都杉並区 浅野純子
少年よ山笑う今育ち行け
東京都豊島区 潮丸
茎が揺れ綿が飛び行く朧月
東京都練馬区 佐上啓
若草に包まれ数ふ鯉の群れ
東京都練馬区 成瀬敦
行く春や母の遺品に香ぐ昭和
東京都練馬区 符金成峰
鞦韆を跨ぎて明日はよき日なり
東京都文京区 遠藤玲奈
釣り堀の浮子見失う夕霞
東京都目黒区 安達秀幸
佐保姫の御髪流るる和風かな
東京都目黒区 吉田八知代
チルチルとミチル振り向く春帽子
東京都青梅市 渡部洋一
教え子の婚礼まぢか春うらら
東京都清瀬市 林優
笙の音に燕舞降る漁村かな
東京都狛江市 中田潤
万愚節己が生まれし時語る
東京都八王子市 村上ヤチ代
春の海サンダル遠くなりにけり
東京都東久留米市 恩田瑛梨
啓蟄や首を回せば骨の音
東京都日野市 則子
白き馬黒き影踏む牧の春
東京都町田市 野村の村
手みやげのひとつ途中の蕗の薹
東京都町田市 ひとみ
祖母愛でる伴侶の植えた桃の花
神奈川県川崎市 子卯月
今は亡き妻のくちびる春の月
神奈川県川崎市 雲舟
君の背を桜影から隠れ見る
神奈川県川崎市 桜花
さくらさくら黄色い帽子はしゃぐ路
神奈川県相模原市 平幸恵
空削る薄墨に咲く朧月
神奈川県茅ケ崎市 つぼ瓦
消えるまで次は吹かずにしゃぼん玉
神奈川県藤沢市 藤之沢いなほ
点けるのも消すのも忘れ春炬燵
神奈川県三浦郡 葉山さくら
霞立ち焼玉匂う舫い舟
神奈川県横浜市 要へい吉
子の画布の絵筆奔放草萌ゆる
神奈川県横浜市 吉良水里
初花や押され乾されて額に入る
新潟県南魚沼郡 高橋凡夫
凍解の陽射しを浴びて背筋伸ぶ
福井県福井市 山下博
春の風予定ひとつを連れて去る
山梨県大月市 坂本真史
定刻を春風とゆく介護バス
長野県安曇野市 小川都
我先に土筆摘み取る小さな手
長野県飯田市 常盤正子
猫の手に揺れる山吹黄金散る
長野県諏訪市 近藤久世
春泥を蹴上げ流鏑馬疾走す
岐阜県岐阜市 洞口武雄
珈琲のミルクの渦も春めきぬ
岐阜県関市 細見康子
子離れは少し苦くてつくしんぼ
静岡県富士市 城内幸江
夕蛙いつかはビルの建つ空地
愛知県春日井市 湖黎
二次元が三次元へと紙風船
愛知県高浜市 篠田篤
口笛や投網繕う春の浜
愛知県名古屋市 横井美佳
陽炎の踊るにまかす石舞台
愛知県日進市 嶋良二
クラス会一人欠けたる花見酒
三重県松阪市 谷口雅春
亀鳴くは元気な父の如き夢
京都府木津川市 初霜若葉
花散って綿菓子売りもあくびかな
京都府京都市 よたろう
ポタージュのとろみほどよき春の宵
京都府京都市 太田正己
交はりは刻を隔てし蜷の道
京都府京都市 北村峰月
春彼岸勲記が見下ろす主の位牌
京都府福知山市 苔花
産休の荷物まとめし朧月
京都府舞鶴市 青海也緒
雨宿り葉音に隠る初蛙
京都府与謝郡 真本笙
冴返るほかなき空の青さかな
大阪府和泉市 小野田裕
春暁や覚めて詰所に遠くあり
大阪府和泉市 清岡千恵子
桜東風飛び交う想い廃線路
大阪府泉大津市 保名隆秀
亡き父を弔いあげて春の海
大阪府大阪市 梶好美
詰め襟を正しく立てて花辛夷
大阪府大阪市 清島久門
桜草咲いて楽しや我の庭
大阪府大阪狭山市 ひでみ
急ぐなと諭すか里の枝垂れ梅
大阪府泉南郡 藏野芳男
花模様ブラウス嬉し春の風
大阪府高石市 岡野美雪
睫毛にも春の日ざしややわらかく
大阪府寝屋川市 伊庭直子
大和路や天平の春残しおり
大阪府東大阪市 瓢佳月
産まれ出で寂しくなりぬ桜花
兵庫県明石市 田淵克洋
海香る春は間違わず沿岸に
兵庫県明石市 康子
春の朝慣れぬ革靴武者震い
兵庫県尼崎市 尼島里志
地面へと命の音や落椿
兵庫県尼崎市 大沼遊山
はるのかぜ整列まえの園児かな
兵庫県神戸市 馬野将幸
たんぽぽの声聞きたくて野に出でる
兵庫県神戸市 さくらそう
薄氷に歪んだ子らの笑ひ顔
兵庫県神戸市 求菩提三六
シャボン玉笑うわが子と夢の中
兵庫県神戸市 森本一徳
桜蕊降れど咲きをり百円玉
兵庫県西宮市 幸野蒲公英
おひなさまいっしょにままごとしてみない?
兵庫県西宮市 辻川花凜(7歳)
万愚節核のボタンに手を置きて
奈良県奈良市 高畑美江子
春風や駅弁売りの語尾長し
奈良県奈良市 堀ノ内和夫
ふとみれば故郷の風に梅の花
和歌山県有田郡 秋冬
背中押す光る水面の若鮎よ
鳥取県鳥取市 こらてく
上げ雲雀小さな点が空に揺れ
岡山県岡山市 みくちゃん
二輪車の補助輪外す春の土
岡山県岡山市 森哲州
小箱から春が出て来てよくしゃべる
岡山県倉敷市 桃太郎
片想いまでも嗚呼、今日卒業か
広島県広島市 いかラム希
人力車夫に手招きされて初桜
山口県山口市 鳥野あさぎ
石庭の真中をしめる紫木蓮
徳島県徳島市 粟飯原雪稜
腰痛に「エイ」と立ちたり木の芽時
徳島県徳島市 藍原美子
船影のなき桟橋に春の塵
徳島県徳島市 有持貴右
秘密基地森へ残して卒業す
徳島県徳島市 笠松怜玉
早春や生きる証しの息遣い
徳島県徳島市 島村紅彩
春暁に翔つ気配見せ鳥の群
徳島県徳島市 遊月
さくらさくらいつだってLet it be
徳島県徳島市 山之口卜一
下り坂スリップしそう春轍
徳島県阿南市 高田俊孝
和服似合し母の忌の花吹雪
徳島県阿南市 深山紫
皺皺の目蓋で呼吸リラの花
香川県仲多度郡 佐藤浩章
ことごとく海へ咲きたる桜かな
愛媛県伊予郡 松田夜市
足出さず尻を動かす汐干狩
愛媛県西条市 砂山恵子
風光る女医はジーンズスニーカー
愛媛県西条市 渡辺国夫
踏んで行く土の軽さや初桜
愛媛県松山市 宇都宮千瑞子
春めくや母校に遠き甲子園
福岡県北九州市 赤松桔梗
ひんやりと肌いやす風藤淡し
福岡県北九州市 よかよか
まんまるの白たんぽぽに淡い恋
福岡県鞍手郡 大瀬戸悟空
耳打ちの言の葉散らす春嵐
佐賀県唐津市 浦田穂積
菜の花の入日を分かつ大河かな
大分県国東市 吾亦紅
筆箱の闇にも春の夢あらむ
大分県別府市 糸永悦子
しゃぼん玉空気と遊ぶ子供かな
長崎県佐世保市 もろ星
ジャケットの下のボタンを留めた春
長崎県長崎市 塩豆
おぼつかぬ足で手の鳴る方へ春
宮崎県日南市 近藤國法
たらの芽や味噌和え嬉し母の味
鹿児島県大島郡 未央
ぶらり旅春に誘われあてもなく
鹿児島県鹿児島市 有村孝人
空旋回渦潮のごと鶴帰る
鹿児島県鹿児島市 東いつ子
※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。