HAIKU日本大賞2018冬の写真俳句 発表

2018冬の写真俳句大賞発表

風待ちぬ冬蒲公英の秘密基地

[ 兵庫県西宮市 幸野蒲公英 ]

(評)寒い冬の中で、その種を、ひいては子孫を次代に繋げようとする様子がよく描けています。この窪みを秘密基地と称した視点も鋭く、また豊かなものですね。タンポポの綿毛はこの秘密基地から、どのような風にのってどこへ行き、どのような花を咲かせるのでしょう。厳しい季節に生きる命を巧みに表し、読み手に余韻を残す幅のある俳句だと評価しました。

次点

天の窓抉じ開けんとす冬日かな

[ 神奈川県横浜市 蓮七 ]

(評)天の窓という言葉がとてもいい響きです。薄雲を打ち破ってでも刺さんとする冬日の力強さを「抉じ開ける」という言葉でよく表しています。写真にも句に負けないほどの勢いがあり、冬の厳しさや寂しさと、それにぶつかり相対する自然の強さをしっかり感じられる俳句でした。

<秀逸賞>

白亜紀も未来世紀も海鼠かな

徳島県徳島市 山之口卜一

(評)日本最古の歴史書「古事記」にも、海鼠(なまこ)は登場します。一億年前の白亜紀から、この先の計り知れない未来までも、海鼠はそのままの姿で生き延びるのだという作者。恐竜から海鼠へ一っ跳びする発想力が、読者の想像力を膨らませます。

縦横の枠にキリンの冬日記

徳島県徳島市 今比古

(評)縦横の枠に分断されながらも、キリンの優しい表情はしっかりと捉えました。中七の終わりで大きく切らず、「の」で軽みを出した作者。写真も句もウィットに富んでいます。可笑しみのある冬日記となっていす。

赤き手を引きて寿く達磨市

長野県塩尻市 御子柴彰

(評)足元を確かめながら石段を行く家族の緊張感と、先を行く人達ののんびりとした歩み。一枚の写真の中に、時間の流れを感じさせます。寿くとは、祝うこと。達磨市のひとコマに、さり気無く添えた句が絶妙のバランスの写真俳句です。

ベンチでブルッ陽光透かす冬紅葉

新潟県魚沼市 前田明子

(評)冬の枯れた景色の中で、一際鮮やかに目に映るのは楓などの冬紅葉。立冬より冬とは言え、街は秋のままです。そして、照り映える紅葉もやがて散り始めます。季節は冬へと色をなす。この冬紅葉も、冬の澄んだ空気に名残の美を残すようになります。

石仏の化粧直しや今朝の雪

石川県金沢市 百遍写一句者

(評)来る日も来る日も、雪が続いた冬。この石仏は、首まで深雪の中です。豪雪地帯で、辛うじて顔を出す石仏の一枚は印象的です。その微笑みが、「今朝の雪」に泣かされた人々の心を癒すかのように優しい。

無音なる冬山へ刻む靴音

京都府京都市 河太郎

(評)風雪に荒れる時があれば、音すらしない時があります。一日の内でも姿を変えるのが冬山。それ程の脅威なのだと句が語っています。この句が、大きな広がりを持つのは破調の故でしょうか。音無き世界の“静”を詠みながら、裏にある“動”をしっかりと見せつけています。

山眠り人は眠らず草枕

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

(評)冬の飛騨の写真だということです。季語は「山眠り」で、冬の山が静かに眠っているように見えると擬人化したものです。句の方は「眠り」「眠らず」と、対句的にした作品。流れるような調べに、冬の絶景に身を置く作者の言葉のセンスが光ります。

落葉踏む靴が奏でる音符かな

愛知県名古屋市 久喜聖子

(評)散り敷く木の葉は、鮮やかな色を留めたまま。樹上では知り得なかった色の豊かさです。そして、サクサクと歩む中にも音色があることを、この句は教えてくれます。写真の美しさと句が相互に高め合い、風趣に富んだ写真俳句となりました。

冬浅し虹の彼方に北の街

北海道札幌市 夢老人

(評)鮮明に弧を描く虹が印象的な一枚。冬の虹は珍しいですね。冬になったばかりで、まだ紅葉のままの木々と一体となって夢の中の街のようです。この美しさを味わってほしいという、作者の純朴な人柄を感じさせてくれる写真俳句。

肩すぼめ微動だにせぬ寒さかな

神奈川県平塚市 八十日目

(評)草木が枯れて物寂しい川辺に、透き通るように白い鳥たちがいます。肩をすぼめたユーモラスなサギの姿です。この光景は、日本の冬の風物詩です。色のトーンの美しさの際立つ一枚。ファインダーの外に広がる冬ざれをも充分に味わうことができます。

半額のポインセチアや街の隅

神奈川県鎌倉市 青山海人

(評)明るく鮮やかなポインセチアも、クリスマスを過ぎてしまうと憂いを帯びるものなのですね。役目を終えたポインセチアは、正月用の花に外へと押し出されます。「街の隅」が、より一層哀感を漂わせます。

新春やせめても今日は華やかに

茨城県水戸市 打越榮

(評)柳が空中に枝垂れ柳を描くように落ちるのが“彩煙柳”。光を楽しむ夜の花火と違って、昼花火はその音と煙の色や形を楽しむ花火です。句は、彩煙柳の華やかさと相まって、新年の慶びを深く印象付けます。

日曜日まず山茶花に会いに行く

三重県津市 青野誠也

(評)山茶花は、初冬の寂しい風景の中で、紅色が鮮やかです。咲くのを心待ちにしていた作者。普段はゆっくりと眺める時間もありませんが、きょうは日曜日。毎週毎週華やかになる山茶花に身も心も癒されていきます。穏やかな休日を思い浮かばせてくれる写真俳句。

しあはせの鶴舞ひ降りし河口湖

徳島県板野郡 木下米子

(評)鶴は、シベリアから日本に渡ってきます。冬は餌をとる以外、じっとして動きません。朝日を受け眩いばかりの富士山は、山を愛する心が写し取った絶景です。この景色に相応しい一句が、写真に広がりと深みを持たせました。

雑踏に溶け込む街やクリスマス

徳島県鳴門市 兆井大

(評)赤や緑のクリスマスカラーで彩られた賑やかな街。まさに「雑踏」の時期です。この街を別の顔で見ている作者。写真も、作者の心情が託され“静”のイメージとなっています。人々のクライマックスとは裏腹に、虚ろな心情が透けて見えて心に沁みる作品です。

除夜詣父の歩幅で砂利を踏む

愛知県岡崎市 山田草風

(評)防寒のいでたちで、人さまざまな感慨を見せる除夜。安堵と疲れの表情に、初詣とは異なる除夜詣らしさを上手く切り取った一枚です。この人混みの中、父の歩幅で玉砂利を踏みつつ詣でたのでしょう。父を気遣う作者の優しさが読み手の心を打ちます。

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。

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