HAIKU日本大賞2018夏の写真俳句 発表

2018夏の写真俳句大賞

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向日葵や日の翳りゐてしづもれる

[ 岐阜県岐阜市 鈴木白湯 ]

(評)綺麗に情景を写真俳句で詠んだ作品です。昼間のひまわりの黄色が夕焼けに取って代わったという、色の移り変わりが感じられます。その場に立つ作者の心情が表現されています。写真もスケールが大きく、奥の鳥居にも何かストーリーを感じさせます。

次点

好きですとわざと花火に重ね言う

[ 島根県松江市 小川智之 ]

(評)季節柄、花火を題材とした作品が多くありましたが、その中でもっとも印象的な作品でした。素直な良句です。写真も画面からはみ出した花火としたことで、花火の迫力、音量が伝わり、作者の気持ちが上手く表現されました。

空洞化している戦後虹の橋

[ 神奈川県鎌倉市 狭静香 ]

(評)混沌としている世界情勢をみると、今後の日本の行く末も憂慮する時代です。空洞化している戦後、という一見厳しい情勢を詠いながらも、そこにある虹に希望を感じます。二つ重なる虹の全体を収めた広がりのある写真もいいです。

<秀逸賞>

雨あけて地に空つなぐ紫陽花や

宮城県仙台市 繁泉祐幸

(評)「梅雨明ける」はありますが、「雨あける」はあまり使われません。けれども最近、日本全土を襲っている豪雨の後は「雨あける」が相応しいですね。紫陽花と一匹の蜂の姿。望遠レンズで静と動の一瞬を捉えた作品です。この写真俳句は、雨の怖さから解放された人々の心を癒してくれるかのように優しい。

帰納する翳した蓮の脈絡や

宮城県仙台市 繁泉まれん

(評)「帰納する」は原理や法則を導き出すこと。「脈絡」は物事の筋道。句の硬さと写真の柔らかさとの対比で作者のオリジナリティを出した作品。「あるがままにただ咲いています」と蓮の独り言が聞こえてきそうなアンバランスさが作品の魅力となっています。

庭に蛇花と一緒に水を待ち

茨城県取手市 雀の涙

(評)どこにでも蛇のいる時代ではないのに、悠然とファインダーを覗く作者。リアルな写真俳句となっています。グロテスクな蛇の姿に反して句は至って優しい。庭先で家畜を飼うことも少なくなった今、蛇を突いて追っ払う時代でもありません。皆が嫌う蛇とでも共存する作者の優しい心が見えるようです。

夏深しぎゅぎゅっと締める靴の紐

茨城県水戸市 打越榮

(評)思わず靴紐を締めたくなる気持ちが伝わってきます。「ぎゅぎゅっと」の擬態語が作者の心を表わし、また中七からの措辞が後方に見えるあの山を目指す仲間たちの声や姿を浮かび上がらせます。迫力ある緑は、まだまだ終わらない夏を印象付け写真、句ともに山に挑む闘志みなぎる作品です。

日の出前棚田の主は夏蛙

埼玉県川越市 てっしん

(評)初夏の生命力と清々しさを届けてくれる棚田の美しい写真です。単なる自然美ではなく人の手によって長い歴史の上に成り立った先人の知恵と苦労が偲ばれ、継承していく人々の努力が窺えます。先祖代々の棚田に暮らすのは人だけではありませんね。季語「夏蛙」が作品にいい味を出しています。

百日紅唄うやピンク暗闇に

埼玉県入間市 荘然

(評)「百日紅」は文字通り、長きにわたって咲き続けます。様々な色で楽しませてくれますが、この写真俳句では漆黒の暗闇にピンクの花。美しい一枚です。作者の視点の良さが冴えています。天上に歌を捧げるかのような姿が闇の中に映し出され、色の美しさと構図の面白さと共に読み手を引き付ける魅力があります。

白雲や富士に着せたい夏衣

千葉県柏市 小草

(評)深い緑が美しい夏山。そして、遥か遠くに富士山がどっしりと構えています。地上であれ、海上であれ、空の上であれ自然の眺めの美しさに変わりはありません。私たちはそんな自然の中で生きているのです。「富士に着せたい」のは冬ならば雪でしょう。「夏衣」ならば「白雲」と作者は言っています。富士山への愛情の籠った写真俳句として読み手を捉えます。

朽ちかけた家は西向き百日紅

東京都江戸川区 大舘圭子

(評)紗がかかった「百日紅」が柔らかく儚げです。夏の暑さを物ともせず勢いよく咲く花の別の貌。天の四方を司る神・四神と人生との関係において、人生は北の玄武に始まり、東の青龍、南の朱雀、そして終わりは西の白虎との説もあり「西」が句意を深めます。「西向き」が「朽ちかけた家」に寂寥感を漂わせています。

藻刈り終へなにもかも息吹き返し

東京都杉並区 浅野純子

(評)「藻刈り」は川や池に繁茂した藻を刈り取る夏の季語です。一般にはそう見られる風景ではない「藻刈り」の景。写真の中の五人がそれぞれの持ち場で精を出す苦労が窺えます。すべての作業を終えて詠んだ一句は、「息吹き返し」たすべてに対する作者の嬉しさが滲んでいます。

凛と立つ我が子にキミは首垂れて

東京都目黒区 カズラスカル

(評)句に季語は入っていませんが、写真の向日葵と青空のコントラストから夏であることは一目瞭然です。写真俳句について、森村誠一写真俳句連絡協議会名誉顧問は、「写真俳句にルールはなく、写真に季語を語らせても結構です」と話されます。この写真俳句は、下からのアングルの良さもあり少女のさりげない仕草に物語を感じさせます。

咲けば散る夏の夜の夢百万人

東京都文京区 鈴木啓公

(評)「柳」か「冠菊」か、降ってくる光の帯の一瞬を捉えた一枚。橋のシルエットもよく効いています。当夜の賑わいを句は余すことなく詠み切っており、「夏の夜」の華々しさを見事に伝える写真俳句です。

利尻の夏そらうみしまを一つにし

東京都町田市 渡辺理情

(評)青と緑のコントラストが鮮やかな一枚。「利尻」は北海道の最果ての島です。写真は、日本海を隔てて利尻山を捉えたものです。遥かにそびえる利尻山は、不思議な力を宿しているかのようです。中七をひらがな表記としたことで句に面白味が出ました。この美しい風景を見た感動が生き生きと詠まれています。

この毛皮脱げたら少しは涼しいか

東京都狛江市 華夏

(評)掌の中で心地よく眠る兎の姿が愛らしい。作者の愛情あふれる平和な一枚です。この夏の酷暑、作者は温度管理に最大限の気を配ったことでしょう。飼い主の気持ちも知らずにのほほんと眠る兎の口から、ふと衝いて出た呟きにも聞こえ可笑しみを誘う写真俳句。

ハイウェイ連なり続く雲の峰

東京都武蔵野市 伊藤由美

(評)ドアミラーに写る後方の雲の峰。そして、窓ガラスに写り込んだ雲の峰。この二つの雲の峰の繋がりが貴重な一枚となって、夏の情感を伝えます。偶然の産物を作品に仕上げた作者。作者の発想と共に、不思議な構図を解くという楽しい時間が読者に与えられました。

母逝きて初めての夏蝉のから

神奈川県川崎市 事物

(評)羽化した蝉の飛び立った後の「蝉のから」は、無常観とも結びついて何か哀れを誘います。「母逝きて」の思いを作者は「蝉のから」に語らせました。母を亡くした哀しみ程空虚なものはありません。誰もがいつかは味わうことになる母への実感のこもった一句。

梅雨晴れや老若男女集い来る

神奈川県平塚市 八十日目

(評)豪華絢爛な飾りが通りを埋め尽くす七夕飾り。街の人々にどれほど愛されているかは、写真を見れば一目瞭然です。鮮やかな色彩の青、緑、黄色の七夕飾りが「梅雨晴れ」の喜びをも表わしているように感じられます。この日この時の情景を句が十七音ですっきりと詠み上げています。

雨蛙花弁に宿り止むを待つ

新潟県南魚沼郡 高橋凡夫

(評)この場面に遭遇した作者の喜びが伝わってきます。「雨蛙」の表情がクローズアップされ、呟きまでもが聞こえてきそうです。写真のままを自然に詠んでいますが、さり気ない中に楽しさがいっぱい詰まった写真俳句です。

百五度の鉄塔過る夏の月

石川県金沢市 百遍写一句

(評)「夏の月」で真っ先に思い出されるのは、「月涼し」の季語にもあるように夜空に浮かぶ白々とした涼しげな月です。しかし、作者が捉えたのは夏の月の出の火照るような月の姿です。周りの空を赤く染めています。「百五度」とは、鉄塔の反りの角度です。重量感を伴う句と相まって、他にない趣きのある「夏の月」となりました。

夏木立なみだの海のひとしずく

山梨県北杜市 矢合ちひろ

(評)頭上の空いっぱいに張り巡らされた枝。緑の濃淡が鮮やかな「夏木立」です。この「夏木立」に作者の心情が託されています。下五の「ひとしずく」の詩的表現によって単に夏の勢いある様ではなく、心中に張り巡らされた悲しみを切り取ったかにも見えます。

短夜や話の尽きぬ姉妹

愛知県名古屋市 久喜聖子

(評)周りの蓮はまだ閉じたままで、二つの蓮が寄り添い合って咲いています。この姿を、夜を語り明かす「姉妹」のようだとしました。「短夜」には、夜の明けやすさへの感慨が込められています。遠く離れて暮らす二人を投影したのでしょう。中七の「話の尽きぬ」が味わい深く響いてきます。

止め処なく轟く湖畔夏の宵

滋賀県野洲市 福田尚人

(評)「夏の宵」は、日が暮れてしばらく経った頃。作者は湖畔で涼みながらの花火見物。夏の夜空と湖面が美しく彩られます。花火が上がるたびに炸裂する音も醍醐味のひとつ。「轟く」の表現は、体の芯まで揺るがしてくるのでしょう。「止め処なく」が絢爛な夜を見事に言い切っています。

洞爺湖の花火の夜や恋に落つ

京都府京都市 筒井絵里

(評)洞爺湖の花火大会は四月から十月まで毎晩行われます。洞爺湖を船で移動しながら花火を上げるので、湖畔のどこからも楽しめます。「恋」の心情を吐露するにはなかなかの勇気がいるもの。しかし、華やかな花火の後ならば至極当然のように大胆に・・・。「恋に落つ」が効いています。誰もがこの恋を応援せずにはいられません。

揚羽蝶止まるは花の蜜求め

兵庫県加古川市 処一

(評)懸命に蜜を吸う蝶の姿は、次なる命へと繋げる姿でもあり愛しさを感じます。その姿はこの写真俳句のように実に美しい光景です。羽化して二週間の命と知るほどに深みを増す写真俳句です。黄緑色の背景が夏らしさを感じさせます。

さあ晴れた待つてましたの植田かな

兵庫県西宮市 幸野蒲公英

(評)この写真俳句の主眼は、たっぷりと水を張った水面でしょう。梅雨晴れの空と黒松の影がくっきりと映り込んでいます。日本の原風景として郷愁を誘われます。「植田」は一か月もすれば「青田」となりやがて稲の実った「秋田」そして「刈田」へと姿を変えます。句の明るさから収穫までの季節の移ろいと作者の喜びを感じさせます。

若人の昂ぶる心百日紅

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

(評)人生の指針となるものが見つかったのでしょうか。はたまた恋人か。「昂ぶる」によって、興奮と意気込みが表現されています。ひとつひとつの小さな花が先へ先へと咲き、勢いのある「百日紅」に「若人」のはやる気持ちを託した作者。作者の心でもあるかのような華やかな紅色が、読者みんなを元気にさせてくれる写真俳句。

紅の翅白と混じれしヒメジオン

和歌山県橋本市 徳永康人

(評)蝶が好む花の一つヒメジオン。吸蜜真っ最中のベニシジミの愛らしい姿があります。中七の「白と混じれし」で、ヒメジオンの白い花畑の広がりが感じられます。その中を飛び交う「紅の翅」を鮮やかに捉えました。写っていない情景を句が想像させる写真俳句ならではの作品。

愉しみて半世紀過ぐ五月鯉

徳島県徳島市 今比古

(評)半世紀も前の手押しポンプと「五月鯉」を取り合わせた写真俳句。もう錆びてしまって鉄の塊となったポンプと新しい命を象徴する「五月鯉」との対比が面白いですね。こんな構図はとても新鮮です。句の明るさから作者の充足した日々も読み取れます。

開き落つ三秒間の遠花火

長崎県長崎市 堀夕子

(評)「三秒間」と言い切った所がこの句の良さですね。たった三秒間の夜空の花火のひとつひとつを心待ちにして遠くから眺めている作者。「遠花火」が、人生の儚さにも似て印象深い一句となっています。控えめに撮影した一枚が、「遠花火」の趣きをしっかりと掴んでいます。

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。

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