HAIKU日本大賞2018秋の句大賞発表

HAIKU日本秋の句大賞 金賞

AIに煩悩のなき鵙の贄

[ 神奈川県相模原市 渡辺一充 ]

(評)作者は囲碁や文芸にまで進化の止まらない「AI」に「鵙の贄」を取り合わせました。「AI」には煩悩がなく、様々な事を人工頭脳に基づき感情に左右されることもなく処理していきます。かたや、「鵙」も躊躇なく贄として捕えた生き物を枝先などに刺しておきます。科学の最先端と鵙の生きざまという普通なら対比することもない組み合わせの発想が見事です。煩悩のある人間からしたら、両者は共に切ないですね。何とも面白い一句です。

銀賞

蜩やリハビリは折鶴と決め

[ 東京都板橋区 丘優子 ]

(評)立秋を過ぎると「蜩」(ひぐらし)の声が聞こえてきます。広島と長崎の原爆忌の頃、「蜩」はカナカナと鳴きます。澄んだ鳴き声には哀れさを感じます。作者はリハビリの為に鶴を折り、一羽折るごとに病気の回復を願いながら折鶴に平和への願いを込めます。穏やかな秋の夕暮が、読み手を包み込むように流れていきます。

銅賞

故郷は墓のみ残り曼珠沙華

[ 神奈川県鎌倉市 青山涼 ]

(評)墓がビルディングに整然と納められる現代です。掲句を我がことのように思う人も多いのではないでしょうか。ここに辿り着く迄の様々な葛藤が推察されます。淡々とした措辞ですが、心中は「曼珠沙華」が語っています。「墓」と「曼珠沙華」。当たり前すぎる光景だと言わせないだけの強い想いが感じられます。寂寥感が漂う切ない一句です。

番台に並ぶ釣銭秋の昼

[ 愛知県岡崎市 山田蝶世 ]

(評)下五の「秋の昼」が効果的な一句となっています。家に風呂がないわけではなくとも・・・。非日常的な空間に身を置きたい時もある。スーパー銭湯の波に押されはしても、昔ながらの銭湯の魅力もまだまだ健在です。「夜」では目に留まらない一句を立ち上がらせたのは「秋の昼」。のんびりと浮世の垢を落とす人たちの日常が垣間見えるようです。

サムパルソンに生まれる秋の虹のあり

[ 大阪府大阪市 清島久門 ]

(評)今まさに世界が注目する韓国と北朝鮮の軍事境界線。38度線は、韓国では「サムパルソン」と呼ばれます。非武装中立地帯でありながら膨大な兵力が配備されてきましたが、今年に入って緩和策が取られるようになりました。急速に変化していく二国間を詠んだ時事俳句。そんな場所にも「秋の虹」が生まれると詠みました。淡くすぐに消えてしまいそうな「秋の虹」が哀愁のある一句を美しく仕上げています。

出たらめの口笛がゆく花野道

[ 徳島県徳島市 笠松怜玉 ]

(評)一見乱暴とも思える句の起こし方が魅力です。上五の大胆さに感服します。「出たらめの口笛」を吹きつつ花野の中を通りゆく人の軽快さが、秋の爽やかさや大らかさによく似合っています。ユーモアがあり広々とした景が浮かびます。一句一動詞とよく言われますが、ピタリと決まった印象的な一句。

秋刀魚焼く男所帯の卓ひろし

[ 熊本県熊本市 柳武久 ]

(評)秋の味覚を代表する「秋刀魚」。「卓ひろし」で「男所帯」の生活感が漂います。旬のものを味わうことの豊かさを知っている作者。秋刀魚を焼きもうもうと煙が上がる夕暮れ時に一人を実感します。秋の旬の美味を味わうほどにわびしい感情が滲み出ています。その感情を淡々と詠み、一人住まいの在り様をあっさりと表しているのが却って心に沁みます。

<秀逸句>

新米を五指おどらせて研ぎにけり

[ 埼玉県さいたま市 加藤啓子 ]

(評)助動詞の「けり」で詠嘆した一句一章句。新米に対する喜びは買った時からもう始まっています。封を切れば昨日と違う艶や匂い。研ぐ指はまさに踊るようにリズミカル。この喜びを最大限に表現した「五指おどらせて」。これ以上の表現は他になく、光り輝く新米の生命感さえ伝わってきます。

金風や一枚岩の開拓碑

[ 千葉県船橋市 川崎登美子 ]

(評)古代中国の自然哲学・五行説で秋が金に当たることから秋の風を「金風」と呼びます。明治時代から日本各地で行われてきた開拓事業。先人の偉業を称える「開拓碑」には、「秋風」より「金風」が似合います。名詞と助詞のみで詠まれた一句で、「金風」と「開拓碑」が響き合い格調高い調べを展開しています。

おいらかに凋む郷里の秋祭

[ 東京都目黒区 安達秀幸 ]

(評)一年の収穫を神に感謝する「秋祭」。家々の繁栄があってこそ、その土地の繁栄があります。しかしながら、若者の地元離れや高齢化による人口減少は進む一方です。村の変容を「おいらかに凋む」と表現した作者。「おいらか」は、穏やかの意味で源氏物語にも登場します。寂しくなった郷里の「秋祭」を作者の精一杯の優しさで詠んでいます。

どの木にも大将がいて天高し

[ 東京都青梅市 渡部洋一 ]

(評)「大将」は、樹木に宿るとされる木霊のことでしょうか。それとも作者は動物園にいて、猿たちをのんびりと眺めているのでしょうか。「どの木にも大将がいて」の発想がいいですね。技巧を凝らすことなくパッとひらめいた一瞬を詠み、秋空が高く澄み切っている様子が表現されています。素直な叙述で軽妙な俳句となっており、作者の天性の明るい人柄を想像させユーモラスな一句になりました。

見渡せば我一人かな秋の浜

[ 東京都狛江市 中田潤 ]

(評)そんな経験があります。秋の浜に一人・・・というのではなく人生の半ばも過ぎた時、周りを見れば父母はもうすでになく兄弟姉妹とも・・・。血を分けた者同士の特別な縁は、他人ではどうしても埋められないものがあります。作者の句意とは違うでしょうが、俳句は読み手の解釈で目の前の一句を味わえます。これが十七音しかない俳句の魅力であり強みです。

幾たびも灯す夜長の授乳かな

[ 神奈川県横浜市 吉良水里 ]

(評)授乳期の子育ては大変ですね。やはり秋の夜は、静かで長い。季語「夜長」の本意です。泣きたいほどの夜もあるのかもしれません。作者のそんな心を終助詞「かな」がやさしく受け止めています。しっとりと情感のある一句が、乳をふくませる穏やかな母親の姿を浮かび上がらせます。

秋深し次の生き甲斐さがす夜

[ 石川県金沢市 茂浪漫 ]

(評)晩秋の季語「秋深し」によって寂しさや喪失感が増し、物思いにふける作者の姿が浮かび上がります。人生100年時代に突入し、百歳と聞いても驚くことはありません。特に、精神面での充足が期待され、高齢者の「生き甲斐」探しこそが今見直されています。次の理想の姿へと追及の日々を送る作者。その人生観を詠んで、深まりゆく秋の夜が趣きを添えています。

満月やかつて駅舎の記念館

[ 長野県安曇野市 小川都 ]

(評)廃線と共に消えた駅。整備して公園になったり、記念館として保存されたり。その町の顔である駅には人それぞれのドラマがあったはず。そのドラマに「満月」を重ね合わせた作者。煌々と照る満月が、かつての駅舎の姿を偲ばせてくれます。一句の持つノスタルジーが読み手の思い出をも呼び起こす秀逸句です。

樹の上のピエロが落す桐一葉

[ 滋賀県彦根市 馬場雄一郎 ]

(評)秋の到来を告げる「桐一葉」。突然、作者の頭上に舞い落ちて来た一葉は「ピエロ」が届けてくれたもの。胸の内の悲しみを隠し道化を演じて楽しませてくれる「ピエロ」は、こうして一人また一人と町ゆく人を笑顔に変えていきます。「桐一葉」と下五に置くことで、澄んだ空に桐の葉がふわりと浮かびます。

アルバムの夫と語らふ夜長かな

[ 大阪府大阪市 雛 ]

(評)三秋の季語「夜長」は、静かで長い秋の夜で闇に対する畏怖を感じさせます。秋の夜長に、作者は亡き夫に想いを馳せます。いつまでも捨てることは出来ないアルバムを、大事に手元に引き寄せています。それは、そこでしか会えない人だから。前を向けない時もある。そんな切なさを秋の夜がふうっと抱きしめているようです。

なにごとも無き青空に柿ひとつ

[ 大阪府泉南郡 藏野芳男 ]

(評)「木守柿」なら冬の季語ですが、作者は「柿ひとつ」と詠みました。芭蕉や子規、虚子が「柿」を詠み、秋の季語として定着させました。「柿」は晴れ渡った秋空に良く似合います。「なにごとも無き青空」の実感のこもった措辞が魅力で、一度読んだら忘れられない自然諷詠句です。「柿ひとつ」残した晩秋から季節は、次第に冬へと移行していきます。なにごとも無い穏やかな秋の日差しが窺えます。

肥薩線の車窓の秋を惜しみけり

[ 兵庫県尼崎市 大沼遊山 ]

(評)熊本県の八代駅と鹿児島県の隼人駅を結ぶ肥薩線。特急「はやとの風」や観光列車、SLも走り、桜島などの絶景で乗客の目を楽しませています。その乗客の一人となった作者。固有名詞の「肥薩線」が馴染みのある風景あるいは記憶に残るあの景色を読み手に思い起こさせ、詠嘆の「けり」が旅の感動や名残惜しさを一層強く伝えます。

たこ焼きの楊枝三本処暑の帰路

[ 兵庫県尼崎市 尼島里志 ]

(評)二十四節気の一つ「処暑」は立秋の十五日後、暑さが止み秋の気配を感じ始めます。朝夕は、幾分涼しくなり仕事帰りの夜ともなれば、温かいものがそろそろ欲しくなる頃。そんな時に目についた「たこ焼き」。久しぶりの「たこ焼き」に「処暑」ならではの味を噛みしめたことでしょう。日常を詠んだリズミカルな一句で、「楊枝三本」に俳味が出ています。

桃すする夫に力の漲りぬ

[ 徳島県徳島市 山本明美 ]

(評)イザナギ命が桃の実三個を投げて黄泉の国から逃げ帰った時、桃の実に「意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)」の名を授けました。桃を一口すするだけで疲れが吹っ飛ぶ、そんなパワーは神代の頃からのものなのです。「桃すする夫」を横目で見ている妻。夫を気遣う妻の優しさが深みのある秀句となりました。

幾人を看取りしことぞ天の川

[ 徳島県阿南市 深山紫 ]

(評)切れ字の間投助詞「や」ではなく、強調の意味の「ぞ」が使われました。「ぞ」は「だぞ」が一字となったものです。「天の川」は古代から神秘とロマンの象徴として天空を流れています。作者は、仕事として数知れない死の場面に接してきたのでしょう。プロとしての重みを感じる凝縮した迫真の一句に「天の川」が寄り添います。

新涼のしまなみ海道ペダル踏む

[ 愛媛県西条市 渡辺国夫 ]

(評)本州と四国を結ぶ三つのルートの内のひとつ「しまなみ海道」には、海峡を横断できる日本で初めての自転車道があります。幾つもの島や橋を渡り継いでいく約七十キロの海の道。その大景を「新涼」の新鮮な空気感で詠んだ一句。瀬戸内海の秋の美しい情景が爽やかに伝わってきます。

<佳作賞>

夜の更けの蟋蟀の音のオルゴール

北海道小樽市 福島敏真

秋の暮れ田んぼの水面が黄金帯

北海道北見市 北村宇未

三日月を招いて庭の一人かな

北海道札幌市 月野笙

子を想い記事を切り取る文化の日

北海道瀬棚郡 小篠真琴

月光が私の胸を撃ち抜きぬ

北海道函館市 庭田麻樹

リンリンとすずむしみたいになきたいな

北海道函館市 庭田健吾(5歳)

藪の中世間話に虫耽る

青森県八戸市 耿雪

焼き秋刀魚癌を恐れず食べる俺

岩手県八幡市 千のまさ

無人宿破れ障子にきりぎりす

岩手県盛岡市 蘭延

柘榴割き腹をみせあう皿の上

宮城県仙台市 繁泉祐幸

ざくろとてからくれないに頬染むる

宮城県仙台市 繁泉まれん

人生の終いは菊の香りなり

山形県東置賜郡 高梨忠美

すすきの穂子孫をとばし天を向く

茨城県つくばみらい市 池端絹子

満月や原子構造にかく似たる

茨城県土浦市 株木謙一

コスモスに乙女の心大仏さん

茨城県常陸太田市 舘健一郎

君の色夜長の影にさがしさがし

茨城県龍ケ崎市 春菊

運動会吃音の子の笑顔かな

群馬県伊勢崎市 白石大介

開墾の馬の足掻きや秋高し

群馬県高崎市 遠藤幸子

足もとの月光濡らすにはたづみ

埼玉県上尾市 くもがくれ

秋風と共に腹へる健康美

埼玉県飯能市 双司

信州で初めて食す花オクラ

埼玉県さいたま市 子卯月

秋夕影大人になったと喜ぶ子

埼玉県さいたま市 月の雫

体育の日の五輪旗のよく動く

埼玉県所沢市 内野義悠

鶴渡る天の扉のひらかれて

埼玉県吉川市 人見正

下手でよし句作に励む夜長かな

千葉県市川市 田村さよみ

名月が川に落とされ揺れにけり

千葉県市原市 夜静嘉

子ら巣立ち夫婦で一尾の秋刀魚焼く

千葉県浦安市 松本聡子

雑踏の宿場の町に赤トンボ

千葉県流山市 葛岡昭男

旅の終想いも付き添う赤とんぼ

千葉県船橋市 花菜

秋の夜桃色吐息七変化

千葉県山武市 貴光天

公園の神鹿聞くや神の声

東京都足立区 宮城六郷

秋なれや夕餉わびしきペットロス

東京都葛飾区 荒木笑生

アゴ乗せて甘える我が仔秋の宵

東京都葛飾区 星野真紀子

廃村や群れて語らぬ曼珠沙華

 東京都江戸川区 大舘圭子

ポケットに溢れるどんぐり宝物

東京都杉並区 久保田明日香

少年の素振り数えて山葡萄

東京都杉並区 中川琥珀

秋麗妻を尻目に男旅

東京都豊島区 潮丸

浅き川までも恨めし朝寒や

東京都練馬区 成瀬敦

七夕や願いたき事ただ一つ

東京都練馬区 符金成峰

どんぐりを隠した場所で待ち合わせ

東京都文京区 遠藤玲奈

歯刷子に銀の印字や涼新た

東京都文京区 あや

木漏れ日にひらりひらりと山紅葉

東京都稲城市 貫井正健

お通しに一品ふえる衣被

東京都清瀬市 林優

紅葉や我人生も染まりけり

東京都八王子市 番場誠一

革張りの光る長椅子そぞろ寒

東京都八王子市 村上ヤチ代

われ先と伸びるモロコシ背比べ

東京都東久留米市 愛宕平九郎

ふるさとは鉄路のかなた濁酒

東京都東久留米市 恩田瑛梨

舞い散れば朱の帳なす紅葉山

東京都東久留米市 鶴田幸男

一人居を持て余しをる夜長かな

神奈川県足柄上郡 吉田安彦

秋高し結婚式の季節かな

神奈川県川崎市 桔梗

テレサ・テン口づさみつつ新走り

神奈川県川崎市 長橋すま子

百僧の拭き込む廊下秋澄めり

神奈川県相模原市 あづま一郎

刻忘れコキリコ流る風の盆

神奈川県茅ケ崎市 つぼ瓦

本堂のストラディヴァリウス月今宵

神奈川県三浦郡 葉山さくら

彼岸花薄暮に溶けて燃え盛る

神奈川県横浜市 狐火

理髪店出て秋風と帰りけり

神奈川県横浜市 竹澤聡

鈴虫をズボンの裾につけている

神奈川県横浜市 要へい吉

空仰ぐ烏天狗と龍田姫

神奈川県横浜市 茜音

オルゴールに秘する錠剤銀河濃し

新潟県新潟市 雪ん子

田畑は疾うに荒地や赤まんま

新潟県南魚沼郡 高橋凡夫

声ふさぐ指より蘭香密そかごと

石川県金沢市 Rey

ハイキングまるで止まれの夕紅葉

福井県坂井市 加藤文洋

大会の準備万端星月夜

福井県福井市 山下博

山寺を見上ぐ宿場の芋煮かな

山梨県大月市 坂本真史

秋の夕はし一列のコンバイン

長野県飯田市 廣瀬功雄

落ちたバトン涙こらえて秋の空

長野県諏訪市 近藤久世

剣山今にも包む朝の霧

岐阜県多治見市 樋口緑

里山に灯りがともる柿の秋

岐阜県飛騨市 小川さと子

名月や俳人たちへショータイム

静岡県湖西市 市川早美

山紫水明映し路肩に梨売りぬ

静岡県浜松市 植田密

エンディングノートは薄い小鳥来る

静岡県富士市 城内幸江

百選の水に秋茄子鳴かせけり

静岡県焼津市 阿部広海

褐色のコントラバスは秋の声

静岡県焼津市 川井さち子

川の末は大いなる海鳥渡る

愛知県春日井市 湖黎

売り飛ばす本を選りたり長き夜

愛知県高浜市 篠田篤

秋の虫住処どこぞや草に鳴く

愛知県名古屋市 西光客

廃校の碑なぞる秋の風

愛知県日進市 嶋良二

一花良し群れてなほ好し彼岸花

三重県松阪市 谷口雅春

留まるも行くも侘しき秋の潮

三重県四日市市 北典

秋風の運ぶ下校のチャイムかな

滋賀県湖南市 岡崎逹栗

二等星に終わる命よ秋深し

京都府木津川市 初霜若葉

古都一夜舞いの手解き色葉散る

京都府京都市 太田正己

秋澄みて能楽堂に鼓かな

京都府京都市 田久保ゆかり

虫の闇あの世とこの世分け隔て

京都府京都市 西崎薫

黄金の稲穂の揺れる過疎の村

京都府京都市 吉川太郎

ライオンのやうな松茸凛と立つ

京都府舞鶴市 方城奈都美

ノクターン秋を琥珀のグラスかな

京都府与謝郡 真本笙

滝壺や紅葉とともに水落ちる

大阪府池田市 杉山美沙緒

やや寒に程よき燗のつきにけり

大阪府和泉市 小野田裕

放浪癖喚起するなり秋澄めり

大阪府和泉市 清岡千恵子

会話増え二百十日の過ぎし朝

大阪府茨木市 坂本珠恵

夕闇が最後に消すは紅葉かな

大阪府大阪市 上田禮子

秋の日がヒト形の穴に飲み込まれ

大阪府大阪市 枝葉

いちじくの籠と富山の置き薬

大阪府大阪市 清島久門

赤とんぼ見ては昔を思い出し

大阪府大阪狭山市 ひでみ

十五夜に式部を模して文綴る

大阪府高石市 岡野美雪

菊酒に父への想いそっと込め

大阪府豊能郡 河野泰子

出て来よと月の誘へる今宵かな

大阪府寝屋川市 伊庭直子

抜けさうな空に泣きさうなコスモス

大阪府枚方市 藤田康子

好まざる鰯喜ぶ嫁愛し

兵庫県明石市 田淵克洋

どこからか金木犀と焼き魚

兵庫県明石市 康子

ロザリオの深き緋色や虫の夜

兵庫県尼崎市 大沼遊山

台風や壁に何かが当る音

兵庫県尼崎市 宮武桜子

三日月の爪痕ひとつ法隆寺

兵庫県神戸市 一徳

吊し干す消火ホースや秋日和

兵庫県神戸市 平尾美智男

晩秋に告知ステージ決まりけり

兵庫県西宮市 幸野蒲公英

水引を結ぶ指先秋深し

兵庫県西脇市 齋藤真弓

暖簾下げなじみ客待つ夜寒かな

奈良県奈良市 岩井壮介

この道のあの辺りかと墓参

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

「大漁や」秋刀魚漁師の顔光る

和歌山県和歌山市 貴志洋史

あへしらふ菊の大輪無人駅

岡山県岡山市 森哲州

咲き残る朝顔縮んで雨上がり

岡山県岡山市 柳瀬和之

秋無聊無頼を気取り太宰読む

岡山県倉敷市 桃太郎

星月夜異国の言葉繋ぎゆく

広島県安芸郡 ありちゃんが

ドヤ顔で秋刀魚咥えしネコ歩む

広島県広島市 奥村將人

キンモクセイまた開いているドア二つ

山口県山口市 鳥野あさぎ

錦秋の山懐に抱かれけり

徳島県阿南市 白井百合子

新米を積みトラクター帰りけり

徳島県阿南市 高田俊孝

渋柿の皮剥き競う夫の笑み

徳島県徳島市 粟飯原雪稜

くぐりたる鳥居は小ぶり山粧う

徳島県徳島市 藍原美子

秋風の頭上にありて野の不動

徳島県徳島市 河野章子

若者のメールに夢中寺の秋

徳島県徳島市 島村紅彩

法事済み座ふとん仕舞う後の月

徳島県徳島市 高松昌子

ヒトケモノ集うどんぐり共和国

徳島県徳島市 山之口卜一

常夜灯ここで終りて川に月

徳島県徳島市 遊月

秋風は駆逐艦だと言った祖父

香川県坂出市 中元悠

墓参り砂鉄のごとくなりにけり

香川県仲多度郡 佐藤浩章

新米を研ぐ音軽く手も軽く

愛媛県松山市 宇都宮千瑞子

金木犀香を追う先の袋道

愛媛県松山市 らつらつ

白鯨が崩れて秋となりにけり

愛媛県松山市 森田欣也

霧籠めて今日より我は七十五

福岡県北九州市 赤松桔梗

もみじして散りゆく平成あとわずか

福岡県直方市 真世

まほろばを追いて風鳴き渡り鳥

福岡県福岡市 よっきゃ

わたつみの四方照らす望の月影

佐賀県唐津市 浦田穂積

撫子に落とした影を立ち退かす

長崎県長崎市 塩谷人秀

秋風の中に眼鏡を置き忘れ

長崎県長崎市 牧野弘志

新松子人を奪った海に起つ

大分県国東市 吾亦紅

豆腐屋の笛のんびりと刈田道

宮崎県日南市 近藤國法

彼岸花周りの景色艶やかに

鹿児島県鹿児島市 有村孝人

青岸寺とり巻き染める山紅葉

アメリカ合衆国カリフォルニア州 鈴木良子

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。

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