2016 HAIKU日本冬の句大賞 結果発表

HAIKU日本冬の句大賞 金賞

人生は何度も開ける福袋

[ 神奈川県横浜市 熊倉恵 ]

(評)福袋は、初商や初売と同じく新年の季語。福袋には夢が詰まっていますが、時には失望することもあります。そんな福袋を何度も開けてみるのが人生だという。考えようによっては、人生何度も挑戦できますよね。この句には取り合せの妙と新年の明るさがあります。インパクトのある記憶に残る一句。句材を発見し表現するのは、俳人のみに許される楽しみ。

銀賞

沈黙を通す夫婦や藁を打つ

[ 岩手県大船渡市 島田章一 ]

(評)沈黙で通せるところに、強い信頼関係が存在します。夫婦の慣れた作業でしょう。天気の良い日、戸外で行われています。藁を柔らかくするために、とんとんと打つ。そして、編む。あまり見られなくなった光景ですが、素朴な日本の農村の原風景です。

銅賞

うつしよの真中は寂し冬薔薇

[ 大阪府和泉市 小野田裕 ]

(評)冬薔薇(ふゆそうび)の季語が良く効いています。真ん中は自由に周りを見渡せる立場です。故に、真ん中は辛くて寂しいのかもしれません。行く先までも見渡せてしまうから。「うつしよ」の動と「真中」の静を対比させた余韻のある句。無常観にも触れた見事な客観写生。写生の目に、心象風景が浮かびます。

冬帝の居座っている城下町

[ 徳島県徳島市 笠松怜玉 ]

(評)冬帝は冬を司る神。冬将軍と同じく冬の厳しさを擬人化して呼びます。澄み渡った冬の日、冬帝が居座っているのだという実感があったのでしょう。城下町に冬の気分が深まりました。感じたままを詠んだ素直な一句。自然への畏敬の念も感じ取れます。

棟梁の一声が解く焚火の輪

[ 東京都町田市 島あおい ]

(評)現実的な句で、焚火の色さえ浮かびます。焚火には楽しさ、懐かしさを感じますね。焚火を囲んでの休憩と打合わせが終わって、さっと持ち場につく人たち。中七の「一声が解く」が有効に働いて、仕事場の臨場感まで伝わって来る作品となっています。

<秀逸句>

老眼鏡外して聞くや除夜の鐘

[ 青森県黒石市 福士謙二 ]

(評)新奇なシーンを詠むのは俳句の華。一方、生活の中の何でもない事を詠むのも俳句の良さ。作者の人柄に触れられたような気がします。俳味とは滑稽でもあり、場ゆえの即興でもあります。俳味のある句は、人を楽しく和やかにします。

靴音と人懐かしき冬北斗

[ 埼玉県所沢市 獅子谷雪 ]

(評)北斗は北斗七星であり、北極星のことも指します。迷った時などには方位が定まります。自分の靴音を聞きながら見上げた冬北斗。そして人懐かしく感じた作者。何百万光年も離れた星と、今を生きる現実の自分とが一つになって感慨深いですね。日常のふとした瞬間に、感覚の冴えを発揮した一句。

息を吸ふ雪明りごと息を吸ふ

[ 東京都杉並区 藤川都 ]

(評)しんしんと降り積もった雪は、その白さで周りを明るくさせます。夜道も明るい。自分の気持ちを、息を吸うことに預けています。冬の詩情も趣もある一句。「息を吸ふ」のリフレインで、現実感と深みが増しました。

わがさだめつくるはわれや寒椿

[ 長野県長野市 水上孤城 ]

(評)中七を「や」で切って、座後を寒椿で締めた味わい深い一句。雪の中の寒椿には生命力を感じます。寒椿に見立てた「わがさだめ」。さだめは自分で作るものだという前向きな姿勢が、哀調の作風の中からも感じ取れます。

定年や茶柱立ちて日向ぼこ

[ 静岡県静岡市 松永信介 ]

(評)定年を迎えてのんびりとした冬の一日。夫婦で一緒に過ごしている時間でしょうか。定年が人生の自然とすれば、茶柱が立つのもまた自然。行住坐臥の生活の中での一句。日向ぼこの季語にぴったりな生活詠となっています。

ゆずり葉はただいつ散ろういつ散ろう

[ 静岡県浜松市 わびすけ ]

(評)ゆずり葉は、新しい葉が生え整うのを見届けるように、古い葉が散るので「譲り葉」の名が付いたとされます。新年の飾りにされます。「いつ散ろう」の繰り返しに、新しい葉に命を譲る瞬間を待つ潔さと寂しさが込められています。いつも命は譲られ、引き継がれます。新しい命への思いが、散ろうとする古い葉から感じ取れる気がします。

真砂女愛したる銀座の雪の朝

[ 兵庫県神戸市 音羽和俊 ]

(評)「降る雪やここに酒売る灯をかかげ」鈴木真砂女は、銀座裏で小料理屋を営みつつ、俳句を作り通しました。恋の句では、他に類を見ない才人。真砂女を忍んでのこの句は句跨りの破調句。真砂女の波乱万丈の人生を思いつつ、銀座の冬の風情が淡々と伝わって来る一句。

おには外お口の中に福は内

[ 山口県周南市 岩田真采 ]

(評)豆撒きの風景が、いかにも楽しそうです。この句の作者は、8歳。小学3年生です。少女らしく可愛らしい発想の俳句となっています。小さな俳人誕生です。HAIKU日本では、俳句の低年齢層への広がりに期待しています。何を詠うのか、どこに面白さがあるのかという俳句の視点を、若い人たちから学びたいとも思います。

初夢や宇宙遊泳楽しむ子

[ 徳島県徳島市 島村紅彩 ]

(評)今から51年前、ロシア人宇宙飛行士が行った人類初の宇宙遊泳。宇宙船を出ると漆黒の中に星が輝き、地球はとても美しかったという。初夢が子どもの宇宙遊泳とは楽しい。こんなに明るくめでたい夢はなかなか見られません。子を思う何とも言えない気持ちも伝わってきます。実現の可能性もあるでしょう。明るい未来が開けています。

大寒の波へし折って出漁す

[ 香川県高松市 尾崎妙子 ]

(評)漁師と冬の海とのダイナミックな景を表出しています。大寒の朝、白波を巻き上げながら黒ずむ海に出ていく漁船。向かい風となる海風が吹き付けます。中七の「波へし折って」で、漁師の勇ましさを臨場感たっぷりに表わしました。雄渾な姿が、目の前にはっきりと想起されます。

<佳作賞>

大寒や小指で啜るゴッコ汁

北海道札幌市 鎌田誠

寒立馬地に踏み堪えし禅師かな

青森県八戸市 金田正太郎

爪を切る音のみ此の世霜の夜

宮城県遠田郡 武田悟

侘助や物言いたげにうつ向きて

宮城県仙台市 小東裕美

冬ざれの無人駅舎の時刻表

秋田県北秋田市 武藤幸雄

福島第一原発冬鴎

福島県郡山市 いらくさ

雪払い土間で一服茶をすすり

山形県酒田市 石川幸子

年酒に心の糧を寿ぎし

山形県東置賜郡 高梨忠美

交通の不便それでも師走かな

栃木県栃木市 大出昌広

冬枯れや頂きくろく赤城山

群馬県前橋市 内田みね子

この世には名を持たぬ子よ笹子鳴く

埼玉県春日部市 阿部功

百獣の王の毛先に寒尖る

埼玉県児玉郡 飯野佳代子

痩せ牛の骨見ゆる程月冴ゆる

埼玉県児玉郡 川崎彰典

サクサクと足跡残る冬の道

埼玉県和光市 仁木奈津美

春を待つ我へビル風陽は微か

東京都板橋区 渡邊湧

穏やかな老後をねがう初日の出

東京都北区 高橋久雄

初競りの手締め鐘の音鎮魂歌

東京都江東区 大友美幸

揉め事の仲裁もして年の暮

東京都新宿区 田中永

茶の花や童子の笑顔あつめ咲く

東京都杉並区 門明美

冬枯れの木々を装うLED

東京都世田谷区 鈴木倭文子

霜柱踏んでも折れぬ強さかな

東京都八王子市 花野碧

初御空居住まい正す和室かな

東京都東村山市 鴨志田和子

深雪晴れ白衣を脱げば昼休み

東京都府中市 櫻井光

江戸っ子となりておでんに竹輪麩を

東京都文京区 遠藤玲奈

かじかんだ手を見て思ふ年の功

東京都文京区 清水大輔

初あかね波ゆっくりと立ち上がる

神奈川県厚木市 北村純一

慕へどもドイツの冬よ月無言

神奈川県相模原市 廣井博栄

呆け防止講座満席小春の日

神奈川県相模原市 志村宗明

客として友を訪ねし霜夜かな

神奈川県横浜市 大野潤治

初山河雀に先を越されけり

新潟県新潟市 佐藤憲

炭焚べる古い者だとつぶやいて

富山県高岡市 晒谷摩綾

寒椿能登の岬に紅灯す

石川県金沢市 河西健二

寒月や窯出しの壺チッと鳴き

福井県敦賀市 岡本海月

風邪に臥す子のぬれまつげそっと拭く

福井県敦賀市 西村泰子

今年また楷書二行の賀状来る

山梨県中央市 甲田誠

安全なブロッコリーに一票を

山梨県北杜市 音閑

拳あげ冬波駆ける日本海

長野県松本市 中沢早苗

大神の桧皮温もる初日の出

岐阜県美濃加茂市 喜多隆文

反骨の声の淋しき古日記

静岡県葵区 連花寺

初夢や意識の底を垣間見る

静岡県沼津市 福田信幸

ためいきに形がありて冬の蝶

静岡県富士市 城内幸江

雪だるま首の付け根に雪を足す

愛知県高浜市 篠田篤

軒先に孫が来たよと松飾り

三重県名張市 弁々

店頭の銀色鞄冬の星

京都府宇治市 江口麻風

還らざる河行く船や去年今年

大阪府大阪市 池田白雨

登り来て静寂に吐息枯木立

大阪府東大阪市 米田明子

新年や友と昭和にもどりをり

兵庫県芦屋市 高橋弥栄

野仏の雪を払いて坂なだら

兵庫県尼崎市 石垣朔風

大冬木親父の如き傷と瘤

兵庫県神戸市 平尾美智男

入り行く布団の中じゃ冬が好き

兵庫県西宮市 川柳大好きっ子

冬空に思いはせるは幼き日

兵庫県西宮市 平松久美

海鳴りや切り岸覆ふ野水仙

兵庫県姫路市 西田建

新年は二拍一礼幸の鐘

和歌山県田辺市 山口康代

お大事にそう言ふ医師も風邪声で

和歌山県和歌山市 中浴智美

元日や曲がりなりにも凡々たり

鳥取県松江市 大倉正嗣

雪が舞う瀬戸の波間に海鵜群れ

岡山県岡山市 柳瀬和之

寒月の雫に映る母のゐて

広島県福山市 藤井茂基

持ち舟に菰被せたき霙かな

山口県岩国市 うだつ

初鼓りんと姿勢の定まりて

香川県丸亀市 寒川靖子

はつふゆに溶け込んでゆく舌下錠

愛媛県東温市 光藤多恵

あかぎれの数多くなる野菜の日

愛媛県松山市 宇都宮千瑞子

芭蕉忌に居住まい正し供華一句

佐賀県唐津市 浦田穂積

何事も六分目がよし初日の出

熊本県阿蘇郡 興呂木和朗

少年の声磨かれし寒稽古

大分県大分市 金澤諒和

潮満ちて小舟に揺るる冬鴎

宮崎県日南市 近藤國法

女の子の靴を揃へて福寿草

沖縄県糸満市 喜納勝代

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。

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