HAIKU日本全国写真俳句大賞2023 発表

大賞

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辰雄忌の夜の駅舎は伽藍堂

[ 宮城県仙台市 繁泉祐幸 ]

(評)この作品は夜の駅舎を神聖な伽藍堂に見立てて、その静謐さを感じさせます。夜の駅と歴史の融合がユニークな雰囲気を創出しています。現代の景色と古典的な要素の混在が、視覚的に印象深いです。写真との組み合わせが、この神秘的な美をさらに際立たせています。過去と現在の結び付きが、思考の奥深さを刺激する作品となっています。

準大賞

散歩道モネが来たかや秋の朝

[ 東京都町田市 雅 ]

(評)秋の朝の情景を画家モネのスタイルで捉えたような豊かな色彩感を醸し出しています。絵画的な描写と秋の静けさが見事に融合されています。読む人を美しい秋の散歩道へと誘い、絵画のような風景を想像させます。この写真との融合が、その情景の美しさをより際立たせ、美術と自然が交わる独特の美しさが感じられる作品です。

ため息にバリアを張ったしやぼん玉

[ 兵庫県西宮市 幸野蒲公英 ]

(評)日常の小さな瞬間を捉えた作品です。ため息とシャボン玉との対比が、儚さと強さのバランスを巧みに表現しています。五七五のリズムを守りつつ、新鮮な比喩を用いることで、俳句の伝統と革新性が見事に融合されています。写真と合わせることで、その瞬間の美しさと脆さがより際立ちます。現代的な感覚と古典的な美しさが調和した、印象的な作品です。

<秀逸賞>

いにしえの娼家に春の雨上がり

宮城県仙台市 泉陽太郎

(評)雨上がりの躑躅の淡いピンクの花には、一層の風情があります。躑躅の花はどこか懐かしく「いにしえの娼家」という独自の世界観が、読み手にもノスタルジーを感じさせてくれます。「春の雨上がり」に咲いた躑躅は、春の情趣を醸し出しています。

時を経てシロツメクサの地に帰る

富山県射水市 中村理起子

(評)「シロツメクサ」はクローバーの名でも親しまれる多年草です。四つ葉のクローバーを探したり、花を冠に編んだりした遠き日の思い出を蘇らせます。「シロツメクサ」だからこその深い味わいがあります。歳月が流れ、この地に戻った作者の人生を垣間見ることができます。


声もなき水面にひそと敷きざくら

大阪府大阪市 安子

(評)「敷きざくら」はあまり使われない言葉ですが、写真を見ると納得させられてしまいます。水面に散った桜を花筏と言わずに表現した作者の感性が光る印象的な一枚です。美しい佇まいの写真に、情感漂う俳句がよく似合っています。

さみだるる深山の風の穏やかに

茨城県水戸市 打越榮

(評)たっぷりと水を含んだ森の幻想的な景は、厳かで神聖な心持ちになります。鬱蒼とした森は樹々の一本一本が生気を増し、その息遣いが聞こえてくるようです。森を行く作者の孤高な姿をリュックが印象付けています。大自然に心を解き放ち、共鳴する心地よさが伝わってきます。


人去りて人なき椅子の夏の影

石川県金沢市 百遍写一句

(評)作者のセンスの良さが感じられる作品。渋いトーンが全体を引き締め、句の雰囲気とよく合っています。影が創り出した様々な線が、広いウッドデッキにアートを描いていて、夏の夕刻の気怠さを表出しています。賑やかだった夏の終わりを感じさせ、影が殊さら淋しさを感じさせます。

蓮青葉ゆたかに包む弁天堂

東京都足立区 yuriha

(評)葉脈をくっきりと写し出した「蓮青葉」が生命の力強さを伝え、中央に据えられた蓮の花の清らかさが引き出されています。吹く風の葉ずれの音も聞こえてきそうな写真俳句です。蓮の名所で知られる上野不忍池。広々とした蓮池が広がっているのでしょう。蓮の花の奥に見える「弁天堂」も効果的です。


ひまわりやローレンと呼ばれた女

東京都渋谷区 月見草

(評)手前の「ひまわり」が背景の夏雲と相まって、夏の盛りを謳歌するかのようです。映画「ひまわり」は第二次世界大戦で戦線に送られ離れ離れになった夫を探し出そうとする妻を描いた永遠の愛の名作。主演女優がソフィア・ローレンです。「ひまわり」のように輝く存在感が魅力でした。今の世界情勢も見据え、兵士や兵士の家族を思いながら強く生きてほしいという願いが込められているように感じます。

庭先に水の芸術梅雨も良し

神奈川県平塚市 八十日目

(評)リングの如き水玉の付いた葉の美しいこと。紫陽花の葉の縁には小さな突起があります。突起が雨粒をしっかりと掴まえ、思わぬ光景を見せてくれています。まるで水晶玉で縁取ったかのように連なり、太陽の光に照り輝く様はまさに「水の芸術」です。雨が続くと気持ちまで沈みますが、思わぬ光景を目にした喜びが感じられます。


夏木立眼福を得る異空間

愛知県名古屋市 梅村沙阿弥

(評)「眼福」とは目の保養のこと。貴重なものや美しいものなどを見ることが出来た幸福感を言います。天に向かって真っ直ぐに伸びていく杉。素晴らしい写角で撮影した幻想的な「夏木立」が見る者を圧倒します。

木道に日光黄菅の迎へをり

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

(評)「日光黄菅」はユリ科の多年草。高原に群生することが多く、日光に多いのでこの名があります。木道に沿う淡い黄色の花が可憐に捉えられています。草花は青々とした夏そのものですが、遠景は霧に包まれ肌寒さを感じさせます。登山者にとって、このような光景に出会うことは大きな喜びでしょう。


戦して決まる国境雁渡る

宮城県仙台市 遠藤一治

(評)秋の夕暮れの淋しさが伝わる一枚。世の中の有様を如実に浮き上がらせ、今の世界情勢を物語る措辞は胸を打ちます。国境のない渡り鳥の姿が「生」の尊さを写し出し、大自然の大らかな活力の中で、人間の矮小さが恥ずかしくなる、そんな心象風景を詠んだ膨らみのある作品です。

花蕎麦や古民家店は二年目に

東京都武蔵野市 伊藤由美

(評)緑の山々をバックに蕎麦の花が一面に咲き誇っている光景は、何かホッとする気持ちにさせられます。蕎麦は標高の高いところで栽培します。移住した人たちが腕を振るっているのでしょうか。山深い場所での出店に、作者は心配していたのかも知れません。白い花が可憐で、優しさのある一枚です。


尾花飛ぶ富士の裾野で別れけり

神奈川県横浜市 寿司人

(評)「尾花」は芒の花をさす秋の季語です。芒の花穂は、熟すにしたがって黄金色から白っぽくなり種を風に飛ばします。「別れけり」の断定が複雑な心境を淡々と伝えています。別れの時を詠んだ一句は切なく、これからそれぞれの場所に散っていく様を表わし哀愁を感じさせます。秋の夕暮れの逆さ富士の景が胸に沁みます。

神世より授かる稲と共に在り

和歌山県橋本市 徳永康人

(評)まだ青く一部は稲穂になりつつある景を、大農家の屋敷と共に撮った絵画のように美しい一枚。日本の良さを十七音に込めた句は力強く、何とも言えない感動を覚えます。日本人にとって心の拠り所である風景に、「共に在り」が寄り添った感慨深い写真俳句。


はつあきの影落としたる大鳴門

徳島県徳島市 今比古

(評)空を仰げば空に吸い込まれそうで、海を見れば渦に吸い込まれそうな自然のパワーが感じられる一枚。画面右下に鳴門の渦が見えます。大潮のダイナミックさとは異なる中潮の細やかな表情がよく捉えられています。「はつあき」の音の響きと、ひらがな表記の優しさが秋の爽やかさを運んでくれます。

豆ひとつづつ月よ夢掴めるか

福岡県久留米市 うろたんし

(評)箸で月を掴む大胆な構図に、まず驚かされます。「夢掴めるか」と疑問を読者に投げかけた破調の一句も魅力的です。「月よ」が優しく響きファンタジーな世界を広げ、ゆったりとした調べの印象深い写真俳句となっています。


呑まれゆく十一月の夕日かな

千葉県船橋市 井土絵理子

(評)大型船と荷揚げのクレーンの間に落ちる夕日が美しい港の光景。人工物の中にあって夕日が、パックリと大きな口を開けた巨船に呑み込まれていくようです。初冬の夕日の侘しさがよく捉えられており、動と静の調和が人生における哀切まで映し出しています。終助詞「かな」が余韻を残してくれます。

父と来し山の温泉初明り

東京都豊島区 粉雪

(評)昔を思い出しての作者の心情の詰まった写真俳句です。「初明り」は元旦、東の空から差してくる曙光を言います。新しい年の幕開けに相応しい光が写し出された一枚。まだ薄暗い景色の中で一層鮮やかさを増し、見つめる作者の新年を迎えた喜びや意気込みも感じられる作品です。

<入選>

艶やかに春を謳歌や朱木蓮

北海道札幌市 鎌田誠

朝に伸び拳の先には春の雲

埼玉県さいたま市 アヴィス

丘の卓布パッチワークの芝桜

東京都足立区 yuriha

春愁や一人夜景に何想う

東京都荒川区 涌井哲夫

草むらに生命燦めく春日和

東京都町田市 雅

紀元節日の丸ロードに模様替え

神奈川県鎌倉市 奈賀子

ただ僕は花になりたいだけなんだ

神奈川県平塚市 八十日目

雪解けて信濃の川に思い馳せ

大阪府大阪市 安子

春めけば父の腹蹴る海馬の子

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

生きるとは禍々しくも梅雨の空

宮城県仙台市 泉陽太郎

郭公の啼きて深山の朝清し

茨城県水戸市 打越榮

灼熱の日照りも何ぞ百日紅

東京都町田市 雅

天平からのきざはしに苔茂る

神奈川県鎌倉市 奈賀子

夏の夜や妻と戯れ影残し

愛知県蒲郡市 海神瑠珂

蓮池や葉に遊びたる露の玉

大阪府大阪市 安子

日もすがら風のいろいろ風鈴寺

福岡県飯塚市 日思子

池の中紅葉泳ぐと吾子笑い

茨城県日立市 松本一枝

みすずかる山を動かす霧ながれ

東京都足立区 yuriha

ゆっくりと時刻んでね盂蘭盆会

東京都町田市 横井澄

雲に押され光る寒露の帯の空

東京都町田市 渡辺理情

爽やかや羊らと明日の話を

神奈川県足柄下郡 ほうちゃん

遠来の顔の揃ひて盆の月

神奈川県横浜市 楽ハイシャ

秋高し乱高下する叫び声

静岡県静岡市 山田由紀子

旅の終わり遥かナントの秋の空

愛知県豊橋市 藍屋紅遊

石像に並びてキノコも微笑めり

大阪府堺市 安藤友里

緯錦紅葉且つ散る用水路

兵庫県神戸市 前田達生

若人の去りゆく街に残る柿

兵庫県西宮市 幸野蒲公英

稲架掛けの落ち穂を狙う痩せカラス

和歌山県橋本市 徳永康人

客人の足取り残る新雪や

青森県弘前市 佐藤奏恵

神楽月雲悠々と峰歩む

千葉県柏市 小草

告白のカウントダウン聖誕祭

東京都足立区 yuriha

寒卵殻一枚のこの世側

東京都狛江市 小川かをり

冬花火凍てつく空のタペストリー

兵庫県神戸市 前田素代

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。