HAIKU日本大賞 大賞発表

HAIKU日本2020秋の句大賞

大賞
内視鏡に映える大腸菊びより
[ 岐阜県安八郡 澤和子 ]

(評)掲句は、作者の体験と季語を掛け合わせることで情趣をかきたてる手法が用いられています。大腸検査と菊びよりという季語を並べることにより、読者はその関係性や状況を読み解き、作者の心境や心持ちを推しはかります。「映える」という言葉からは、モニターや診察資料をもとに医師から大腸の健康状態が良好であると伝えられたことがうかがえます。病院までの道すがら、不安を抱える作者を、菊の咲き誇る頃の日和が、やさしくなぐさめ、はげましてくれたのでしょう。そして、検査を終えた安堵感と相まって、帰路の作者はいっそう晴れやかな足取りで歩かれていることでしょう。

特選

特選
棟上げの空いっぱいに鰯雲
[ 三重県松阪市 宇留田敬子 ]

(評)「鰯雲」は、鰯が群れるように大空に広がる美しい秋の雲の代表格です。この大きな景に、「棟上げ」の時の高揚感を取り合わせました。集う人々の笑顔、幸福感、人の幸せを願う気持ち、そして郷愁。それらが一句をグッと押し上げ、読者の胸にスッと入ってくる気持ちの良い俳句。「空いっぱいに」と詠んでその実在感が伝わってきます。

特選
八月の空一枚をめくりけり
[ 大阪府大阪市 清島久門 ]

(評)作者がめくったのは「八月の空」。太陽が昇り、沈んでいく、そしてまた今日という日が始まります。日めくりのカレンダーの八月の一枚をめくり終えた瞬間に、目に入ってきた爽やかな秋の色。新たな一日を迎えられたことへの感謝の心が伺えます。「空一枚をめくる」ということ以外何も言わない省略による奥深さのある大きな一句。作者の感慨が伝わってきます。

準特選

準特選
花野来て万葉集の中に入る
[ 山梨県中央市 甲田誠 ]

(評)「万葉集の中に入る」という面白い発想の句。万葉集は読み人知らずの歌が約四割を占め、庶民の別れの歌や恋の歌がたくさん詠まれています。色とりどりの花野が作者を万葉の世界へと誘い、万葉の人たちの歌が蘇ります。万葉集の中の歌人に思いを馳せながら散策する景が浮かびます。

準特選
富士山に寄りかかりたる案山子かな
[ 静岡県駿東郡 斜芽 ]

(評)作者は静岡県の方なので身近にある田園風景なのでしょうが、読者にとっては驚きの大景です。富士山をバックにして思わぬ光景に遭遇したようです。案山子が富士山に寄りかかるとは・・・。目の前に広がる雄大さの中の長閑な景色が目に浮かびます。終助詞「かな」が自然に効果的に効いています。

準特選
おとうとの口笛は風秋草原
[ 大阪府堺市 伊藤治美 ]

(評)「おとうと」への深い愛情を思わせる情感と響きを持った一句。「秋草原」がその広々とした風景の中に爽やかさと寂しさの入り混じった風情を届けます。口笛が風と共に高い秋空に吸収され、響きながら消えていきます。簡潔な表現の中、下五を一音多くしたことで想いの深さも伝わってくるようです。一緒に遊んだ草原に幼い頃のあの口笛を聞いたのでしょう。

秀逸句

青天を集めて太る芋の露
[ 東京都新宿区 マメちゃん ]

(評)里芋の大きな葉には窪みがあり、葉が揺れると転がった露が集まって大きくなっていきます。そこに、晴れ渡った秋空が映っている様子を「青天を集めて太る」と詠んでいます。「芋の露」が「青天」を取り込み美しく輝いて見えます。作者の感性と忠実な写生の目が光ります。

いづれ吾も星屑となる天の川
[ 神奈川県相模原市 渡辺一充 ]

(評)雲状の光の帯「天の川」が天上に美しく横たわっています。もの思う秋。秋だからこそものの哀れを思います。巨大な銀河系の中にほんの一時存在する「吾」という愛おしくも儚い存在。命の重みを感じながら、その命さえもいずれ宇宙の星屑の一つになってしまうというそんな無常観が一句から伝わってきます。

AIに火加減委ね秋刀魚焼く
[ 神奈川県茅ケ崎市 坂口和代 ]

(評)団扇で扇ぎながら七輪でもくもくと煙を立てて、秋刀魚を焼く光景は懐かしい昭和の日常でした。今や、様々な分野でAIの導入が進んでいます。AIに火加減をセットして安心して焼き上がるのを待てば良い。「委ね」に安心感と、どこか空しい心情が表れています。「AI」の一語が今現在の社会を反映し「秋刀魚焼く」との取り合わせが楽しい一句。

古文書を巡る秋旅ミニボトル
[ 神奈川県茅ケ崎市 つぼ瓦 ]

(評)自分の好きな飲み物を入れて気軽に持ち運べるのが「ミニボトル」。古文書を読んだり集めたりするのが趣味なのでしょう。そのために旅に出ます。お供になるミニボトルへの作者のこだわりが垣間見られます。「ミニボトル」がこの旅とこの一句を味わいのあるとても新鮮なものにしています。

苦瓜もセンターに立つ味となり
[ 新潟県新潟市 茶々 ]

(評)夏の日差し除けとして、また手軽に育つこと、体に良い事などで育てる人も増えている「苦瓜」。一昔前までは苦みによって余り食用には向かないと嫌われものだったはずが、ゴーヤチャンプルーなどの人気で独特の苦みはすっかり認知されました。食卓を豊かに彩る人気モノとなった「苦瓜」に作者は「センターに立つ」という晴れやかな舞台を与えました。

蓑虫を揺らし孤独と戯れる
[ 静岡県富士市 城内幸江 ]

(評)葉っぱや小枝の屑から蓑を作る「蓑虫」。雄は羽化して蛾になりますが、雌は蓑の中で一生を過ごします。枝にぶら下がった蓑虫を揺らしてみる作者。蓑虫の姿はどこか愛らしくどこか寂しげです。そんな姿と作者自身の孤独感を取り合わせています。下五の「戯れる」で、風に吹かれるまま孤独を楽しんでいるような一句。

本棚の太宰に射すや月の影
[ 愛知県知多郡 伊藤京子 ]

(評)「月の影」が読者に秋の情緒を届けてくれます。書棚に整然と並べられた本。特に太宰の本の傍に明るい名月の光りが届いているようです。夜がめっきり長くなった秋には、太宰の本をふと手に取ってみたくなります。一日の終わりの一人の時間がゆったりと流れていきます。

風呂好きの父の剃刀秋彼岸
[ 三重県松阪市 谷口雅春 ]

(評)「秋彼岸」で風呂好きだった父を偲んでの作と分かります。剃刀に在りし日の父の姿を思い浮かべる作者。風呂場にそのまま置いてある剃刀に、今不思議な存在感が現れています。お父様が戻られて、気持ち良さそうに湯船に浸かっておられるかのような一句です。懐かしい日々を今も大切にしながら生きている作者の横顔が見えます。

露天湯に五体あそばす紅葉晴
[ 京都府京都市 小巻満江 ]

(評)幸福感に満ち溢れた一句。この上もない穏やかな時間が流れています。流麗な措辞に体言止めの「紅葉晴」が効果的で、抜けるような青空と紅葉が彩る山々が浮かびます。身も心も「露天湯」にあずけて享受している至福の境地が、「五体あそばす」で読み手にも充分に伝わってきます。

自分史の今がまんなか秋日和
[ 大阪府和泉市 小野田裕 ]

(評)空は青く高く澄み、爽やかさが感じられる「秋日和」の一日。歩んできた半生を振り返る作者。その充実した日々は誇らしくさえあるのでしょう。「まんなか」と言い切ることで、人生の後半に向けた強い意欲も感じます。取り合わせた季語「秋日和」の爽快さが作者の心情を大きく引き出しています。

秋空の低きところを予讃線
[ 大阪府大阪市 清島久門 ]

(評)「予讃線」は、香川県の高松から瀬戸内海沿いに西進して愛媛県の宇和島に至る約300キロのJR線。晴れ渡った空と真っ青な海との境界線を「空の低きところ」と詠んで果てしない広がりをイメージさせました。続く助詞は「を」と置いて「てにをは」の選択にも力量を感じさせ、「予讃線」の下五で仕上げたきっと旅好きな作者の旅吟の一句。

踊子の後れ毛のぞく笠の下
[ 大阪府大阪市 富永泰行 ]

(評)「踊子」は、先祖の霊を慰めるために踊る子で秋の季語です。今年はコロナ禍にあって、各地の盆踊りが縮小や中止になりました。そんな中、行われた貴重な神事。出番を終えた「踊子」の安堵感と充足感の入り混じった横顔を描写した作者。「踊子」のうなじに焦点を絞り、「後れ毛のぞく」と情緒ある句に仕上げています。

特養へ帰る父の背白木槿
[ 大阪府堺市 伊藤治美 ]

(評)「白木槿(しろむくげ)」はアオイ科の落葉低木。五弁の花を付け夕方には萎みます。白さの中に寂しさの漂う花です。見送った側もいずれは見送られる側になる時が来ることを皆分かっています。季語「白木槿」の白が醸し出す空気の中に、悲しみや愛や感謝があります。「ありがとう」と呟く作者の声が届いてくるような一句です。

昭和唄聴きたし夜長ハイボール
[ 大阪府泉南郡 藏野芳男 ]

(評)何年経っても色褪せない「昭和唄」。時代を刻んできた唄は、時に涙が出るほど懐かしく切ない思い出と共に蘇るように思います。昭和を生きて、皆そんな齢になっていくのでしょう。一人飲む「ハイボール」に懐かしい昭和への想いが流れており、秋の夜長の何処か愁いを感じさせる一句。

荒れ寺に名も美しや秋茜
[ 大阪府寝屋川市 伊庭直子 ]

(評)秋の空にひと際鮮やかなのが「秋茜」。澄んだ空気の中を美しく飛び回ります。その場所が「荒れ寺」となると侘しさが漂い、ことさらに元気な赤が印象的です。どこまでも澄み渡る空を四つ角のある如くに動く「秋茜」の姿が目に浮かびます。秋茜の群れというよりは、秋の寂寥感に包まれた景色の中に捉えた赤い一点と思われる深い情趣の一句です。

一本の七夕笹の漁港かな
[ 兵庫県尼崎市 大沼遊山 ]

(評)漁港の船溜まりに掲げられた「一本の七夕笹」。子供や親たちが全員で願い事を書いた大きな笹は、漁師たちの家族同様の日頃の付き合いの表われなのでしょう。漁師町の一体感が「一本の」から読み取れます。漁師町に伝わる伝統の風物詩をさらりと詠んで温かみのある一句。

恋の句も一つ秘めたり柿日和
[ 兵庫県三田市 立脇みさを ]

(評)「柿日和」は柿がたわわに実った頃の穏やかな日和です。そんな平和な日常の中に、恋の句も一つ秘めたという作者。幸福感の漂う一句です。句会や吟行中で、作者が投句の中に恋の句を忍ばせたという場面も想像されますね。秘めた恋の句の行方を読者に想像させる楽しさのある一句です。

家族とは今は子を指す蕎麦の花
[ 岡山県岡山市 ギル ]

(評)蕎麦は、高い山の上で育てられていることが多いですね。日本の原風景のような天空に開けた山村は、「蕎麦の花」が咲くと美しい真っ白な光景に生まれ変わります。故郷を守り続ける人が思うのは都会に出た子のこと。その心情が真っ白な「蕎麦の花」に託され、ひっそりとした寂しさを呼び起こす一句です。

リストラの子に松茸を焼いておる
[ 山口県山口市 鳥野あさぎ ]

(評)パンデミックにより社会全体が急激に変化しています。倒産や雇用の縮小で失業者の数が増えています。「リストラ」と「松茸」という具体的な道具立てが成功し、リアリティのある作品となっています。主観を入れずありのままを詠んだことで、場面が的確に伝わり深い親心が読み手の胸に届きます。

田仕舞の煙まっすぐ星ひとつ
[ 徳島県阿波市 井内胡桃 ]

(評)収穫の作業をすっかり終えた田の中から、一本の煙がまっすぐに上がっていく。これまでの疲れを忘れ、安堵感と共にくつろぐひと時。「煙まっすぐ」が、下五の「星ひとつ」にとても良い感じで繋がっています。昔ながらの日本の田園風景の美しさを改めて思い起こさせてくれる作品です。

人声にまじる鈴の音霧襖
[ 徳島県板野郡 伊藤たつお ]

(評)何の「鈴の音」でしょう。四国ではよく見かけられるお遍路さんでしょうか。「霧襖」は襖のように見えるほど濃く深い霧のこと。山中で閉じ込められると緊迫感が増してきます。視界のない中、人の声と鈴の音だけが頼りなのでしょう。心細さの中、霧襖の奥に感じた人の気配にホッとした空気感が伝わってきます。

良夜なり無口の夫といてたのし
[ 徳島県板野郡 佐藤幸子 ]

(評)「良夜」は中秋の名月の夜。空気も一段と澄んで明るく月の光に満ちています。夫と共に仲良く月見をしている様子が目に浮かびます。倒置法を用い上五で断定して、満月の夜の美しさを強調しています。無口な夫との夫婦としての長い歳月を思わせ、夫への愛情に溢れた一句。

20頁一気にめくる秋の風
[ 高知県高知市 阿部美晴 ]

(評)「初嵐」や「野分」なら、強風なのでと説明になる所を、「秋の風」としたことで別の意味を感じさせます。「一気にめくる」は、作者自身の残る人生を一気に進めたかのように読み手に伝わります。「20頁」が何とも印象的で、「秋の風」の持つ物寂しさが一句に込められています。

脚注を引くたび秋気深くなる
[ 福岡県北九州市 中村重義 ]

(評)夜の時間が長くなった秋には、ことさら読書に身が入ったりするもの。解説や補足説明が書かれた脚注を引きながら本を読み進めていく作者。じっくりとのんびりと理解を深めています。秋の澄み切った「秋気」が深くなっていくのを感じながら・・・。ゆったりとした時間の中に秋の気持ちの良い空気が流れています。

蟷螂の譲れなき道通せんぼ
[ 大分県豊後大野市 後藤洋子 ]

(評)「蟷螂(とうろう)」は鎌切のこと。「譲れなき道」の表現で、斧状の前肢を立て翅を広げた威嚇するかのような姿が目に浮かびます。小さな体で頑張っている蟷螂に「通せんぼ」された作者は一瞬たじろぎながらも、その勇敢さを自嘲気味に眺めているのかもしれません。俳諧味のある一句です。

佳作

稲刈の香の濃き中にバス降りぬ
北海道上川郡 夏埜さゆり女
庭に露大雪山頂白光す
北海道河東郡 柴田満月
まヽならぬコロナコロナで秋過ぐる
北海道苫小牧市 渡辺千恵子
新米の炊きたつ湯気に鼻笑う
北海道函館市 琴吹蘭
イワシ干し銀鱗うねる北斎画
青森県八戸市 金田正太郎
雁行のソーシャルディスタンスの列
岩手県一関市 砂金眠人
澄み渡るボーイソプラノ秋深し
岩手県北上市 川村庸子
雑踏の青空高く赤トンボ
岩手県盛岡市 蘭延
水郷の櫓を漕ぐ音も水の秋
宮城県仙台市 鹿目勘六
人生を問わず語るや葛の花
宮城県仙台市 繁泉祐幸
家飲みも新酒片手に笑顔かな
秋田県秋田市 青風郁
照紅葉硫黄漂ふ湯の香かな
山形県山形市 栗原ただし
夜もすがら心も冷える秋夜空
山形県米沢市 山口雀昭
雨下の花雨あがりの花酔芙蓉
茨城県常総市 石塚昭夫
淋しさや行き先迷う蔦紅葉
茨城県日立市 松本一枝
けふの空明日の大空鳥渡る
茨城県常陸太田市 舘健一郎
輝が故月こそ暗き孤独かな
茨城県水戸市 一本槍満滋
十三夜忘れぬように赤でまる
栃木県宇都宮市 徳子
名月に触れたくて雲近づきぬ
栃木県宇都宮市 平野暢月
赤べこはいつもポジティブ秋の暮
栃木県下都賀郡 小林たけし
殉教の碑に赤とんぼ旅終わる
群馬県伊勢崎市 白石大介
秋深しビーフシチューの深き皿
群馬県高崎市 凡志
ひとり寝に夜具掻き寄せり虫の声
群馬県前橋市 藍澤拓紀
秋深し小さき墓に無沙汰詫び
群馬県前橋市 荒井寿子
物忘れは安らぎの色新酒酌む
埼玉県上尾市 鈴木良二
絵手紙の収まりきれぬ新松子
埼玉県行田市 吉田春代
秋の夜の針も鋏も更けにけり
埼玉県越谷市 新井高四郎
廃屋や厨か窓に唐がらし
埼玉県さいたま市 アヴィス
人恋し不動の水面秋霞
埼玉県ふじみ野市 黒川茂莉
月の下ポルシェの隣信号待つ
埼玉県和光市 此順
行く秋や薪の積まるる里外れ
千葉県我孫子市 八川信也
自販機を転げて出づる秋気かな
千葉県我孫子市 松井恵勇
おくるみを逃げる赤子や暮れの秋
千葉県君津市 叶矢龍一郎
野分跡とも獣道とも能登の山
千葉県千葉市 加世堂魯幸
蝋燭の炎の揺らぎ野鶏頭
千葉県船橋市 井土絵理子
ふみきりを牛車脱輪豊の秋
千葉県船橋市 川崎登美子
産毛美し赤子の尻と桃の尻
千葉県南房総市 沼みくさ
月重ね便りに紅葉指で追ひ
東京都足立区 繁泉まれん
キリコ展秋陽差し入るビルの谷
東京都板橋区 田口万蔵
妣愛しむらさき色の秋日傘
東京都江戸川区 羽住博之
仙通の褪せた句帳に秋にじむ
東京都杉並区 市川伸一
蕎麦の花群れるこの田を継ぐは無し
東京都世田谷区 アレックス
ひつぢ田や大地の鼓動ほとばしる
東京都豊島区 潮丸
臨月に小さき傘や秋の雨
東京都練馬区 符金徹
丸く濃く縮まりて酢橘元気なり
東京都文京区 遠藤玲奈
稜線にひとりひとりの秋木立
東京都文京区 柴山修丈
往年の銀幕スター秋刀魚焼く
東京都青梅市 渡部洋一
柿くへば正岡子規が欹てて
東京都小平市 佐藤そうえき
いわし雲良きこと一つ馬肉買う
東京都八王子市 見尾田博樹
参道を抜けて寄席行く菊日和
東京都八王子市 村上ヤチ代
妹を背に夕月の土手うたひつつ
東京都東村山市 鮫島啓子
バリウムに耐えて和栗のモンブラン
東京都武蔵野市 伊藤由美
一歩出ず背の母の軽さ星月夜
神奈川県川崎市 犬
予報士の笑顔と気合天高し
神奈川県川崎市 じゃんじゃん
行く秋が持ち去るものを見張りをり
神奈川県川崎市 下村修
新涼や山の祠の山の水
神奈川県相模原市 あづま一郎
ニュートンの数式のまま銀杏散る
神奈川県相模原市 金本節子
神風てふ言葉遺して敗戦忌
神奈川県相模原市 藤田ミチ子
菊の日や祝ひの膳の嚥下食
神奈川県相模原市 山田則子
寝転べば背の分だけは高き月
神奈川県座間市 市田潔
星月夜眠りの底の純喫茶
神奈川県中郡 野谷真治
フルートの音色も高く秋の空
神奈川県横浜市 受川昌子
毬栗や地に口開けて笑ひをり
神奈川県横浜市 要へい吉
御使の喇叭高鳴る柘榴の実
神奈川県横浜市 古関聰
松茸や何気な振りで数字見る
神奈川県横浜市 教示
オンラインやうやく慣れて秋に入る
神奈川県横浜市 竹澤聡
どっしりと湖面の向こう秋の富士
神奈川県横浜市 前田利明
雁渡る音色は何故かさみしさう
新潟県長岡市 安木沢修風
人はみな器となりて秋の水
新潟県長岡市 関矢紀静
にじり口紅葉一葉の点前かな
新潟県新潟市 茶々
冗談に冗談返る秋麗
新潟県南魚沼郡 高橋凡夫
けんけんぱ鬼灯のある處まで
富山県南砺市 珠凪夕波
秋空や添いし月日は雨奇晴好
石川県金沢市 玲
鈍行がのっそり停まる月の駅
山梨県韮崎市 樋口英子
風は秋入れ替えたくてループ橋
山梨県南アルプス市 小林克生
一瞬をそれぞれに舞うすすきかな
長野県伊那市 成如水
こっちだよ芒が手招きする季節
長野県南佐久郡 高見沢弘美
氏神へ道案内は彼岸花
岐阜県揖斐郡 仲井智子
江ノ電の窓に色濃き秋日影
岐阜県岐阜市 辻雅宏
秋風や眼閉じるも良し仰ぐも良し
岐阜県岐阜市 山崎眞也
秋なすが早く取ってと肩叩く
岐阜県下呂市 西脇文江
ちちろ鳴く庭に男の秘密基地
岐阜県多治見市 緑
案山子かな黄金の波に見え隠れ
静岡県菊川市 季野みく
手を合はす墓前に四方の法師蝉
静岡県湖西市 市川早美
空塞ぐがまずみの実や君の紅
愛知県豊田市 アバズレーナ
新涼の風はんなりと身八つ口
愛知県名古屋市 久喜聖子
君の名を波が消しゆく残暑かな
愛知県名古屋市 白沢修
もみぢ葉や香り語らふ自撮りなり
愛知県名古屋市 西門光夫
長き夜ミルクを冷やす手の温もり
愛知県名古屋市 藍太
群雀陣立崩さず落穂食む
愛知県日進市 嶋良二
はなとハナ覚えた孫のキンモクセイ
三重県伊勢市 野呂真佐美
十六夜の光のぞくか遺影まで
三重県志摩市 あきあかね
姉川の堤をそめし曼珠沙華
三重県志摩市 廣岡梅生
秋雨に電話響きて良き誘い
三重県松阪市 宇留田敬子
雁の声強まる風が運ぶ朝
三重県松阪市 春来燕
黒鉛の庭石冴える秋風や
三重県三重郡 水越晴子
十五夜の月より光る三十路妻
滋賀県大津市 今坂孝哉
彼岸花棚田の畦を独り占め
滋賀県守山市 鹿島哲
団栗や昭和の音を転がして
滋賀県栗東市 葛城巖
代走のすぐに二盗や獺祭忌
京都府宇治市 池田華甲
玄関に秋色集む夜半の風
京都府京丹後市 川戸暉子
冷まじやうそもほんとも時の運
京都府京都市 太田正己
宅配の軽き足音空高し
京都府京都市 西崎薫
父母逝きて令和二年の曼殊沙華
京都府京都市 田久保ゆかり
秋の夜ゲームしてたらおこられた
京都府京都市 帆立(9才)
病む友に絵便りはみだし柿ひとつ
京都府長岡市 金山節子
ゆるやかな坂ゆるやかに秋思来る
大阪府和泉市 小野田裕
敗荷にざらりと風のあたりけり
大阪府和泉市 小野田裕
秋の日に古刹を歩くどこまでも
大阪府茨木市 水口栄一
わたつみの島影遠し盂蘭盆会
大阪府大阪市 清島久門
バーベキューセットを広げ敬老日
大阪府大阪市 清島久門
ロレックス磨き眺める夜長かな
大阪府大阪市 星野正樹
皇帝の高貴な名持ち秋に立つ
大阪府河内長野市 新田嘉子
秋たけて伊那七谷は風の底
大阪府岸和田市 夜明久美子
木守柿何か言ひ分ありさうな
大阪府堺市 椋本望生
朝霧の睫毛を濡らす盆地かな
大阪府枚方市 玉水
ランプウェー下り朝霧の小樽かな
大阪府八尾市 乾祐子
雨後の香に調香師聞く秋薔薇
兵庫県明石市 松丘海春
防災のエリアメールや震災忌
兵庫県尼崎市 大沼遊山
黙々と調律続く夜寒かな
兵庫県尼崎市 大沼遊山
猫来たり君と見上げし高き月
兵庫県神戸市 鞍馬睦子
鹿垣や付け忘れたるにじり口
兵庫県神戸市 小谷徹
捨案山子とは思はれぬ目の力
兵庫県神戸市 平尾美智男
方舟に載せる荷選ぶ夜寒かな
兵庫県宝塚市 あさいふみよ
行間に潜るが如くカミュの秋
兵庫県西宮市 幸野蒲公英
爽やかやみ空に放つサキソフォン
兵庫県西宮市 森田久美子
寧楽町の辻知り尽くす親子鹿
奈良県奈良市 堀ノ内和夫
花縮沙今年は皆と愛でたくて
奈良県奈良市 緑風
秋祭り母在る如く寿司つくる
岡山県岡山市 玲水
月光にはや薄れゆく肌かな
岡山県岡山市 森哲州
十六夜に三割引の団子食ふ
広島県尾道市 広尾健伸
朝霧を押し込め昇りゆく気球
広島県東広島市 水野友晴
秋時雨泣かぬ子主役披露宴
広島県福山市 永見昂大
活け花に心得ありて野菊生け
広島県福山市 林優
冬近し野麦峠の夜のしじま
山口県下松市 廣中健人
中年という領域に今年酒
山口県山口市 渡邉貴之
昼の月木陰を捜す棚経僧
徳島県徳島市 雪稜
カーブミラー目印として秋彼岸
徳島県徳島市 藍原美子
干柿のカーテン軒に吊るす家
徳島県徳島市 京
銀漢の端にコロナに病める星
徳島県徳島市 山之口卜一
色草を摘む人の居て名を知らず
徳島県徳島市 渡哲也
産声に安堵の夫や今朝の秋
徳島県阿南市 白井百合子
片仮名用語老いの挑戰夜長かな
徳島県板野郡 秋月秀月
秋の暮夕日を写す吉野川
徳島県板野郡 一宮チヱ子
背のびして自販機押す子秋暑し
徳島県板野郡 奥村文子
眉山の一瀑細き渓紅葉
徳島県板野郡 佐藤一子
秋嶺へいざなう声やリフト発つ
徳島県美馬郡 美葉
菊人形今年のモデルは誰かいね
香川県高松市 宮下しのぶ
十人十色の血色紅葉葉よ
香川県仲多度郡 佐藤浩章
ランドセル揺れる向こうに彼岸花
香川県丸亀市 宮井直樹
木犀を掠めて神戸市営バス
愛媛県松山市 秋本哲
狭き庭秋風すっと円描く
愛媛県松山市 宇都宮千瑞子
ゴツゴツと土の匂いの芋を掘る
福岡県飯塚市 日思子
復興の経過報告志波の柿
福岡県朝倉市 伊藤史栄
最強の台風養生テープ貼る
福岡県北九州市 赤松桔梗
泣く子抱く中や祈れぬながれ星
佐賀県唐津市 浦田穂積
あざやかさ秋の京都の庭園は
大分県大分市 安部あけ美
迎火や薄暮にあをき畦の道
大分県豊後大野市 後藤洋子
呼び捨ての名前飛び交ふ秋祭
宮崎県日南市 近藤國法
道端にそっと咲いてる彼岸花
鹿児島県鹿児島市 有村孝人
こんもりとまぶしき芒や道果てぬ
沖縄県中頭郡 畑人