2017HAIKU日本冬の句大賞 結果発表

HAIKU日本冬の句大賞 金賞

寒牡丹似合う色着て二十日咲

[ 京都府京都市 斎藤実 ]

(評)寒牡丹は開花から二十日程で満開になるとされます。よって、「二十日咲」(はつかざき)は満開になったばかりです。白、ピンク、赤、紫と花の色は多く、それぞれに華やかで魅力的です。雪避けに菰(こも)をかぶせたり、藁を敷いてやったりします。「似合う色着て」の中七が優雅に響く一句一章句。真冬にけなげに咲く花の女王を擬人化して成功しています。

銀賞

泡盛のオンザロックと冬銀河

[ 三重県津市 青野誠也 ]

(評)近年は、焼酎ブーム。泡盛もよく飲まれています。沖縄特産の焼酎です。これをオンザロックで飲む。氷と共に、見事に透き通っています。この句は「冬銀河」との取り合わせの一句。冬銀河は言うまでもなく、天球に冴えつつ透き通るように輝いています。芭蕉の言葉に、「取り合せ。これを上手という」とあります。独特の視点を持った作者ならではの逸品。

銅賞

冬晴れの室戸岬や空と海

[ 京都府京都市 水色 ]

(評)「冬晴れ」は凛と冴えわたった冬の晴天のこと。作者の眼前には、抜けるような青い空と青い海が広がっているのでしょう。「空と海」の下五は明快で好感が持てます。無限の大きさを持つ言葉ですね。室戸岬は空海の修業の場。空海の名も、この場所で付いたと言われます。同行二人の冬遍路。お大師様は今も、回っておられます。

初詣混んでやさしくぶつかりて

[ 東京都目黒区 岸本現世 ]

(評)「やさしくぶつかりて」で決まった一句です。初詣は、誰しもが心穏やかでありたいと願うものです。日本人たる所以です。大勢の人がいてぶつかることもあるでしょう。句の姿もやさしい女性ならではの一句。初詣のひとコマを見事に切り取りました。

頑固爺粋に着こなすちゃんちゃんこ

[ 山梨県甲府市 悠 ]

(評)「ちゃんちゃんこ」は、綿入れ羽織で袖のないものを言います。日本人ならではの部屋着です。腕が動かしやすいのでしょう。時代を経て、今も重宝されています。「頑固爺」だが、なかなかのセンスの持ち主。俳味の効いた一句です。俳味を会得すれば、人生は豊かになります。

凩や今年限りのクラス会

[ 三重県松阪市 谷口雅春 ]

(評)数年ごとに開かれてきたクラス会。同じ年を重ねながら、少しずつ年の重ね方が違う面々。ところが、人数も減ってきて、もう止めようという最後のクラス会になりました。「凩や」(こがらしや)と大きく切って出た歯切れの良い句。再会を楽しみに別れるはずなのに・・・。作者の心中を「凩」の季語が痛いほど伝えてくれます。

生きたくて生きるでもなく日向ぼこ

[ 大阪府和泉市 小野田裕 ]

(評)心の目で、何かを感じ取ろうとする時があります。この句は、下五の着地に何を持ってくるかで大きく印象の変わる一句です。「日向ぼこ」で、作者の人生が満足いくものであったことがうかがえます。のんびりと楽しんでいる日向ぼこの光景が浮かびます。これで、読者も救われます。

<秀逸句>

煮凝りや進行形の愛とどめ

[ 岩手県北上市 川村庸子 ]

(評)煮凝り(にこごり)は、魚を煮汁と共に固めたものです。「煮凝り」と「進行形の愛」の取り合わせですが、ゼラチンの中で愛が育つというイメージでしょうか。封じ込められて育つという視点が独特ですね。作者の感性でしか描けないあたたかな世界です。

嫁看取るこれも人生冬至粥

[ 東京都大田区 寿美代 ]

(評)作者は89歳。俳句作りに力量が感じられ、ベテランの味が滲み出ています。逆縁は、義理の身ではあっても辛いものです。作者の深い悲しみが感じられ、読み手の心を一気に掴んでしまいます。感慨深い作品です。

彷徨ひてわれも六花のひとひらに

[ 東京都杉並区 藤川都 ]

(評)日本の自然美として平安朝の時代から歌人に多く詠まれてきた雪には、さまざまな副題があります。その一つが「六花(むつのはな)」。雪の結晶の形から、そう呼ばれます。この句では、「ろっか」となります。我が身を雪に例える作者。頭上に降ってくる雪を見上げて「彷徨ひて」(さまよひて)の上五には、その一片となった感覚が伝わってきます。

干大根ぐるりと大き空家かな

[ 大阪府和泉市 清岡千恵子 ]

(評)「大き」は接頭語で名詞に付きます。「大き空家」は離農者の家でしょうか。その周りを囲うかのように、大根が干されています。過疎の進む現代の田園風景です。ポツンとある一軒の「空き屋」と、たくさんの「干し大根」の景。余情たっぷりの作品となっています。

叱られし子に剥いてやる蜜柑かな

[ 兵庫県神戸市 吉田あゆみ ]

(評)孫に対する優しさでしょうか。家族の深い繋がりが感じられます。平易な詠みぶりで印象鮮明。平和な日常が目に浮かびます。あたたかな家族の一ページです。

結婚は一度で足りる花キャベツ

[ 兵庫県姫路市 佐藤日田路 ]

(評)花キャベツはカリフラワーの名で親しまれています。下五においてピタッと決まっています。今の時代、こうすっぱりと断定されると耳の痛い人も多いでしょう。作者自身の人生とも重なっているのかも知れません。遊び心が効いています。

朴落ちて裸一貫問うてみる

[ 広島県東広島市 安芸クイーン ]

(評)やや難解な一句ですが、どうしても作者の心情に迫りたくなってしまいます。朴(ほう)は、もくれん科の落葉樹。日本中で見られます。大きな葉を持つので、散り方も大胆です。それを見て「裸一貫を問う」とは、すべてを払い落し再出発という意味でしょう。一から出直すことは、人間に許された大きな幸せなのかも知れません。

風呂敷の結び目かたき賀客かな

[ 山口県下関市 磯部清昭 ]

(評)年始の挨拶に訪れた客の性格まで表してしまった一句。品もずしりと重そうです。正月らしい楽しい雰囲気が漂います。十七音で読み手にイメージを膨らませてくれます。日常の中に新鮮な句材を発見した好例。

寒椿落ちて地面の音を聞く

[ 徳島県徳島市 笠松八重子 ]

(評)寒椿は早咲きの椿で、美しさと生命力に満ちています。「寒椿落ちて」と来れば、その美形とか散り際を詠むのが大方。「地面の音を聞く」で類想を越えました。一瞬を捉えた素直な叙述による一句一章が心地よい。句材に新鮮さを与えました。写生句はこうありたいという一句。

木枯しを追越してゆく高校生

[ 徳島県徳島市 三好スミヱ ]

(評)若々しい一句。「木枯しを追越してゆく」という発想がすばらしいですね。木枯しを気にもかけず、さらに追越して行きます。自転車に乗っているのでしょう。高校生のエネルギーがみなぎっています。

<佳作賞>

荒星へ打ち傾きて赤灯台

北海道留萌市 三泊みなと

福寿草ガラスの天井突き破れ

岩手県北上市 川村庸子

初御籤百圓賽銭十五圓

岩手県盛岡市 森哲州

チェスをする神々おもふ樹氷かな

宮城県大崎市 りょう

太陽の産声雪の朝に立つ

宮城県遠田郡 武田悟

満を持し秘酒凱旋す除夜の鐘

宮城県仙台市 伊世貴志

夜光街色づけ溶ける白い息

茨城県龍ヶ崎市 トナカイト

電車待つ朝の一分春隣

茨城県常陸大宮市 細貝雅之

御手洗の作法を修し初詣

栃木県宇都宮市 平野暢月

亡き父の背に重なりし冬の街

群馬県伊勢崎市 白石大介

ランタンが紅茶を映す冬至かな

群馬県藤岡市 居間正三

露天湯におとがい沈め雪の宿

埼玉県さいたま市 加藤啓子

珈琲にはちみつ垂らすふゆのあさ

埼玉県所沢市 奏多未亜

真冬にはC定食になる餃子

埼玉県和光市 雨人

巫女の手の鈴音凛と寒の空

千葉県市川市 田村さよみ

あたふたと枯芝はたく駐車場

千葉県浦安市 滝三豊

新年の心だけでも生き難し

千葉県木更津市 安田蝸牛

源泉があふれて至福雪の宿

千葉県白井市 ますやおしょう

新年を突き抜けて行く新幹線

千葉県流山市 葛岡昭男

日脚のぶ骸骨わづか前かがみ

千葉県船橋市 川崎登美子

流氷が群青の海流れゆく

東京都昭島市 万里

寒鯉の浮き上がるとき水ゆるむ

東京都足立区 大野哲太郎

子が引けば妹になりきる千歳飴

東京都板橋区 小黒松男

ほうとうや空半分は富士の雪

東京都江戸川区 丸山恵美

母の味いま妻の味晦日蕎麦

東京都大田区 細川てつや

ラメひかる留袖の君初踊り

東京都清瀬市 林優

霜柱栄ゆ古敵の家の跡

東京都国分寺市 小林雅野

冬晴れや先延ばしたる物ぐさテレビ

東京都国分寺市 茂財凸次

冬ざれや真横に滲む旅の窓

東京都狛江市 中田潤

凍蝶や薄日のなかにたじろがず

東京都品川区 永野ぼう

彼の地でもオリオンの星は見えますか

東京都新宿区 空色

新雪をつかみ顔拭く夜勤明け

東京都新宿区 牛鬼

凪いだ空父が走って揚げる凧

東京都墨田区 中井貴之

故郷のそらは元気か寒卵

東京都台東区 文過

風切ってママとおそろい耳袋

東京都西東京市 今井名津

切通し抜けて鎌倉冬の雨

東京都練馬区 符金徹

磨かれし玻璃戸の清し初旭

東京都八王子市 村上ヤチ代

己が逝く入口探す冬の蝶

東京都日野市 笹木久男

大根を洗いて真白今日のわれ

東京都日野市 都美里

豆まきを待ちきれぬ子や手を掲ぐ

東京都文京区 遠藤玲奈

たこ焼も地球も丸し小六月

神奈川県相模原市 相模太郎

勝ち負けは御破算にする冬銀河

神奈川県相模原市 博栄子

粉雪に触らぬように弾む子ら

新潟県佐渡市 金子七郎

冬の空一つ拡げる視野を持ち

新潟県長岡市 安木沢修風

埋み火に似たり記憶に灰寄せる

富山県高岡市 三橋雀

駅弁を食む窓外や冬深む

福井県福井市 山下博

オムライス待つも楽しき旅始

山梨県大月市 坂本真史

パソコンにキーワード入れ事務始

岐阜県岐阜市 辻雅宏

万物が息を潜める雪の朝

岐阜県岐阜市 洞口武雄

丹頂は日の丸となり此処にいる

静岡県富士市 城内幸江

手を耳にかすかに聞こゆ暮れの鐘

愛知県稲沢市 照三平六

しまひ風呂湯気にしみ入る除夜の鐘

愛知県岡崎市 西村愛美

雪だるま作りし子らに明るい未来

愛知県刈谷市 水仙

着膨れの内の何処かで電話鳴る

愛知県高浜市 篠田篤

十二列放置自転車冬ざるる

滋賀県彦根市 馬場雄一郎

福袋ぎょろ目で測る夢の嵩

京都府京都市 おおたまさ己

マスクして夜景のにじむ終列車

京都府京都市 十川長峻

雪国で句碑の多さを納得す

京都府京都市 与太郎

冬銀河先へさきへとみをつくし

京都府与謝郡 真本笙

白山を越し来る音色虎落笛

大阪府大阪市 杉山睦

ぬばたまの夜を飛び越え初烏

大阪府大阪市 菊地由佳

酔ひしれし食さずもがな粕汁や

大阪府大阪市 妃斗翠

水仙の朗読の子に香り立つ

大阪府門真市 田中たかし

落ち葉ふむ音を連れゆく山路かな

大阪府東大阪市 明霞

娘より父が精出す雪達磨

大阪府箕面市 攝洲

元旦や庭の陶狸は一人酒

大阪府守口市 重松早苗

虎落笛あるじの居らぬ衣紋掛

大阪府八尾市 乾祐子

なまはげを待つ家々の明るき灯

兵庫県神戸市 音羽和俊

足跡は何れのけもの氷橋

兵庫県神戸市 河内きよし

駅裏へ向かふ出口や花八手

兵庫県神戸市 平尾美智男

まかがやく富士正面に大枯野

兵庫県神戸市 本村幸子

冬椿スノードームに閉じ込めて

兵庫県西宮市 幸野蒲公英

とろとろと一両電車日脚のぶ

兵庫県西脇市 山尾カツヨ

蓮根掘り泥田相撲に息を呑む

兵庫県姫路市 大塚高史

息災の母の便りや冬野菜

奈良県奈良市 杜紀郎

初夢やふたり浜辺に馬を駆る

奈良県奈良市 堀ノ内和夫

見入る雪積もる地平に和を願い

岡山県備前市 垣内

水凍る関所の跡の踏絵石

徳島県徳島市 粟飯原雪稜

惜別の中に深雪のあるを知る

徳島県徳島市 大岩明子

北風の窓打つ夜やページ繰る

徳島県徳島市 河野幸枝

雪帽子のせて地蔵のすまし顔

徳島県徳島市 島村紅彩

仲直りして鯛焼きを半分こ

徳島県徳島市 山之口卜一

吾病めば夫病むごとし水仙花

香川県高松市 尾妙子

引っ込める机上の本も冬ざるる

香川県仲多度郡 佐藤浩章

一輪車パッチワークの冬田中

愛媛県西条市 渡辺国夫

枯れ菊に匂い残るや雨の跡

愛媛県松山市 宇都宮千瑞子

冬嵐去って朝日を切る稜線

愛媛県南宇和郡 おうの

笹鳴きや山影かぶる円明寺

高知県高知市 里見高義

冬日和髪耳髭爪皆手入れ

福岡県北九州市 赤松桔梗

冬枯れや空のすき間にカラス鳴く

福岡県宗像市 厚姫

片恋の明日をも見えぬ雪簾

佐賀県唐津市 浦田穂積

言ひ訳を拒む姿の冬木立

長崎県長崎市 牧野弘志

綿雪を羽織り休まれ寝観音

熊本県阿蘇郡 興呂木和朗

学び舎の冬の木枯れて吾も白髪

大分県別府市 大島綸子

イーゼルを立てる港の小春かな

宮崎県日南市 近藤國法

言葉無く診察待ちし時雨かな

鹿児島県大島郡 未央

※俳号で応募された方は、原則として俳号で掲載させて頂いております。

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